食物摂取頻度調査と食事記録アプリの特性を比較、一般診療所での栄養指導普及を視野に
藤田医科大学は6月5日、近年一般に普及されている食事記録アプリに着目し、日本で広く使用されている2つの食物摂取頻度質問票との比較を行った結果を発表した。この研究は、同大医学部臨床栄養学の飯塚勝美教授と医療科学部臨床病態解析学分野の成瀬寛之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。
食事調査法は、食事記録法、食事思い出し法、食物摂取頻度法などが挙げられるが、完璧なものはない。これまで広く使用されてきた食事記録法は管理栄養士の技量によるところが大きく、経済的、時間的に負担の大きな調査法と言える。食物摂取頻度法は一定数の食品名、食品の摂取頻度(毎日1回、週に1~2回、月に1~2回など)、おおよその1回量(重量や容量、大きさ)を尋ねる方法だ。また、食事記録アプリは食べたものの写真や名前を入力し、アプリで解析する方法。食事記録アプリと2つの食物摂取頻度質問票は被験者自身で結果を入力するため、管理栄養士のいない施設でも行える利点がある。医療のデジタル化が進められている日本では、食事記録アプリとWebで入力・解析する食物摂取頻度質問票に基づいた栄養指導が一般の診療所で普及すると予想される。そのため、研究グループは両者の特性をあらかじめ比較しておく必要があると考えた。
今回の研究では、被験者59人に、2つの食物摂取頻度調査(FFQg、BDHQ)を行ったのち、1か月のうち7日以上食事記録アプリ(asken)で食べているものを3食とも(おやつ含め)入力してもらった。
摂取エネルギー・栄養素に相関あるが互換性なし、「結果を混同してはいけない」
研究の結果、食事記録アプリの記録を7日間以上解析することで、ビタミンB12やビタミンDのような長期に貯蔵できるビタミンは日により摂取量が大きく違うことが明らかになった。2つの食品摂取頻度調査、食事記録アプリで計測したエネルギーや栄養素については、いずれの検査法で総エネルギーを見ても1,600キロカロリー程度と過小評価されたが、両者に相関が見られた。次に両者の互換性をブランド-アルトマン分析法で比較したところ、いろいろな栄養素のパーセント誤差が40%以上であり、互換性はないと考えられた。したがって、食事記録アプリで測定した結果と、2種類の食物頻度摂取調査で測定した結果を混同してはいけないことが示された。
両者ともに摂取エネルギー量は過小評価傾向と解釈する必要
食事記録アプリと2つの食物摂取頻度質問票のどちらも、実際の栄養摂取量より過小に見積もられることを意識して結果を解釈するとともに、前後の体重の変化など他の指標も参考にして評価する必要がある。食事記録アプリでは従来の記録紙法でできなかった長期間の食事内容、毎食の食事内容を解析できるが、毎回食事を入力する手間がかかり、保存するデータ量は多くなる。食物摂取頻度質問票は1回の解答入力(20分程度)で済み、データ量は少ない利点があるものの、個人の記憶に依存する欠点がある。重要なことは、食事調査法に完璧なものはないということを十分に認識した上で使用することだと考えられ、どちらも長所を生かした使用法が可能と考えられる。また、栄養摂取に関して患者のフォローアップをする際には、どちらの方法を用いるかあらかじめ決めた上で経時的な変化量を捉える必要がある、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・藤田医科大学 プレスリリース