岸田文雄首相は4日の国家戦略特別区域諮問会議で、大阪市内において一包化に限定した調剤業務の委託事業を実施する区域計画を認定した。今年度から開始することとしており、大阪市長が薬局間の契約内容等を認めた場合、対象業務の委受託が可能となる。
同事業は、大手薬局チェーンや中小薬局等で構成する薬局DX推進コンソーシアム、大阪府、大阪市が共同提案していたもので、調剤業務のうち一包化に関する業務を他地域の薬局に委託する。
具体的には、委託薬局が処方内容の分析、調剤設計を行った上で、受託薬局に処方内容の伝達・依頼を実施。受託薬局は薬剤の一包化、一包化された薬剤の確認を行った上で、委託薬局に配送し、委託薬局で最終監査を行い、患者に服薬指導する流れだ。
一包化業務でも患者が直ちに必要とするもの、散剤の一包化など委託薬局で調剤の監査を行うことが難しいものは対象外としている。同事業の実施により、調剤後フォローアップなど薬剤師の専門性を発揮する業務の充実等を効果として見込んでいる。
医薬品医療機器等法施行規則第11条の11により、薬局間で調剤業務を委受託することは認められていないが、厚生労働省は共同提案について、「国家戦略特区における実証の方向性で適切に検討を進めていきたい」との方針を表明。
3月に「厚労省関係国家戦略特別区域法第26条に規定する政令等規則事業に関する省令の特例に関する措置を定める命令」が改正され、国家戦略特区で一包化に限って調剤業務の委受託が可能となった。
一方、日本薬剤師会は、「外部委託の目的、患者や地域医療に与える影響について検討されておらず、必要性について慎重に検討すべき」との考えを示しており、事業を実施する場合も、安全に実施できたか、対人業務の充実につながったかなどを検証するよう求めている。
厚労省は、4月の厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で、次期制度改正に向けた検討テーマの一つとして「調剤業務の一部外部委託の制度化」を提示している。