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脳梗塞後のリハビリ、神経学的予後と関連する画像評価法確立-名古屋市大ほか

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2024年06月07日 AM09:20

MRIを用いた脳梗塞後リハビリテーション介入効果の計測が注目されている

名古屋市立大学は6月3日、脳梗塞後の患者に縦断的にMRIを撮像することでリハビリテーションによる脳虚血巣の可塑性と回復過程をリアルタイムでモニタリングすることができる最新の画像評価法を確立したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の打田佑人研究員(神経内科学)、植木美乃教授(リハビリテーション医学)、松川則之教授(神経内科学)、米国ジョンズホプキンス大学の大石健一教授(放射線科学)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Stroke」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脳梗塞を発症した患者にとって、脳梗塞後のリハビリテーションは極めて重要である。適切なリハビリテーション介入によって、患者の脳虚血巣では脳組織の再生化が促進され、失われた機能が改善し、生活の質の向上と社会復帰を目指すことが可能となる。脳虚血巣の範囲や構造、機能を視覚化して定量的に計測できる最新のMRI技術が開発され、脳梗塞後のリハビリテーションの効果を客観的に評価し、治療計画を最適化するためのツールとして、近年注目を集めている。

患者の脳虚血巣の鉄沈着量と髄鞘化の程度、神経学的予後との相関を調査

研究グループは、脳梗塞を発症してリハビリテーション介入を行った患者を対象として、最新のMRIを用いて脳虚血巣の鉄沈着量と髄鞘化の程度を縦断的に定量化し、神経学的予後との相関を調べた。

2020年8月から2022年3月の間に脳梗塞を発症して入院となった患者112人の属性や身体学的検査、神経学的検査を記録した。続いて、リハビリテーション介入中の縦断的なMRI検査に同意した患者32人を対象に、リハビリテーション前後の脳MRIおよび神経学的検査を施行した。脳MRIでは、定量的磁化率マッピング(Quantitative Susceptibility Mapping、QSM)とR2*relaxometryを組み合わせて縦断的に解析することで、虚血巣の磁化率値(ΔQSM)とR2*値(ΔR2*)の縦断的変化を計測し、双方のパラメーターのベクトルが同じ向きの時は鉄の変化を、逆向きの時は髄鞘の変化を捉えていると画像学的に解釈することができる。本手法の撮像時間は約10分間であり、現在多くの施設にて運用されている通常のMRI機器(3-Tesla)で撮像が可能である。

各臨床病型によって脳虚血巣の鉄・髄鞘の変化の過程が異なると判明

脳虚血巣の鉄と髄鞘の変化の特徴が脳梗塞の臨床病型と共通点を有していることがわかった。例えば、心原性脳塞栓症(Cardiogenic Embolism)の脳虚血巣では主に鉄が吸収されていく傾向を画像学的に捉えていた一方で、ラクナ梗塞(Lacunar)やアテローム血栓性脳梗塞(Atherosclerosis)の虚血巣では主に髄鞘の形成が捉えられていた。また、神経学的所見が悪化しやすいBranch atheromatous disease(BAD)では、主に鉄の蓄積と脱髄を画像学的に捉えていることがわかった。

NIHSS評価による神経学的予後、ΔQSMと有意な相関係数認める

National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)評価による神経学的予後を目的変数、ΔQSMとΔR2*を説明変数、年齢や性別、臨床病型、発症からMRI撮像までの時間、虚血巣範囲を共変量として調整した重回帰分析では、ΔQSMは有意な相関係数を認め(0.311[95%CI, 0.098–0.520];P=0.017)、ΔR2*は有意な相関係数を認めなかった(coefficient, 0.114[95%CI, −0.127 to 0.345];P=0.291)。

脳梗塞後のリハビリテーション患者において、脳虚血巣における磁化率の経時的変化が神経学的予後と関連していることがわかった。

治療計画の最適化ツールとして活用できる可能性

今回の臨床画像研究で用いた最新のMRI解析技術を脳梗塞後のリハビリテーション患者に臨床応用することにより、QSMとR2*relaxometryを組み合わせた縦断的な計測値から、脳虚血巣の鉄沈着量と髄鞘化の程度を同時に定量化することが可能になった。「この技術により、リハビリテーション効果を客観的に評価することで、回復過程の脳組織変化のより詳細な理解が深まり、治療計画を最適化するためのツールとして活用できる可能性がある」と、研究グループは述べている。

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