医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 週3回以上/1回2合以上の飲酒が、その後の「問題飲酒」につながる可能性-富山大

週3回以上/1回2合以上の飲酒が、その後の「問題飲酒」につながる可能性-富山大

読了時間:約 2分17秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2024年06月07日 AM09:00

仕事と家庭のバランス、他者との関わりなどを含めた問題飲酒のリスク要因は不明

富山大学は6月3日、労働者の問題飲酒の発生に影響を与える要因を、仕事や家庭生活、社会活動の観点から、追跡調査により明らかにしたと発表した。この研究は、同大学術研究部医学系の茂野敬講師、立瀬剛志助教、関根道和教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Industrial Health」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

飲酒は多くの国で文化的、宗教的、社会的慣習の一部となっているが、問題飲酒によって引き起こされる疾病の世界的負担は莫大であるとの報告がある。日本においては、アルコール乱用または依存症といった問題飲酒の生涯有病率が過去10年間で約2倍に増加しており、問題飲酒によるがんや脳血管疾患による死亡リスクの増加も報告されている。また、日本における問題飲酒による労働損失の推計が約2兆5000億円/年ということが明らかとなっていることから、労働者の問題飲酒の予防への取り組みが重要な課題となっている。

先行研究において、仕事の特性や家庭生活、社会活動の有無と労働者の問題飲酒が関係することが示されている。しかし、それらの研究の多くは横断的な調査であり、それらの要因が将来的に問題飲酒の原因となるのか因果関係の証明には至っていない。また、労働者を対象として、仕事のストレスや仕事のパフォーマンス、仕事と家庭のバランス、家庭以外での他者との関わりを含めて、男女別に問題飲酒のリスク要因に関する追跡調査はなかった。

1,535人の公務員を5年間追跡、調査項目は「飲酒習慣・働き方・」など

今回の研究は、2014年の日本公務員研究参加者4,552人のうち、2014年時点で問題飲酒を認めた参加者を除き、2019年の調査で追跡可能かつ分析に必要な調査項目に回答のあった1,535人分のデータを分析対象として行った。

調査項目は、性別や年齢、飲酒習慣(飲酒頻度や飲酒量、問題飲酒の有無)、仕事の特性(職位や交替勤務の有無、仕事のストレス主観的な仕事のパフォーマンスなど)、ワーク・ライフ・バランス(婚姻状況や仕事と家庭のバランス)、社会活動(知人と関わる頻度や親しい友人の数など)の計19項目とした。

問題飲酒累積発生率は男性9.6%・女性5.8%、職位、交替勤務、仕事の自己評価等が影響

分析の結果、2014~2019年の5年間における問題飲酒の累積発生率は男性で9.6%(1.92%/年)、女性で5.8%(1.16%/年)だった。男女ともに、「週に3回以上の飲酒習慣がある人」と「1回に2合以上飲酒する人」は、それ未満の人に比べて男性で各々2.66倍と1.73倍、女性で各々3.81倍と3.36倍、5年後の問題飲酒が多いことが明らかとなった。

また、男性においては、職位が高い人(中間管理職・管理職)は、職位が低い人(一般職員)に比べて0.56倍、5年後の問題飲酒が少なく、交替勤務がある人は、ない人に比べて2.96倍、5年後の問題飲酒が多いことが明らかとなった。女性においては、主観的な仕事のパフォーマンスが悪い人は、良い人に比べて5.30倍、5年後の問題飲酒が多いことが明らかとなった。

コロナ禍による飲酒習慣の変化などにも着目し、今後もデータ分析を継続

今回の研究では、2014年と2019年の5年の期間でデータ分析が行われたが、問題飲酒を引き起こすまでには、5年よりも長い期間を必要とする可能性があるため、長期的な分析が必要だと考えられる。

「日本公務員研究は本年度、第6回目の調査を行っている。コロナ禍で飲酒習慣が変化したとも言われており、データ分析を継続していく」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大