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骨盤骨折の診断、3次元画像を用いた深層学習法開発で精度向上-兵庫県立大ほか

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2024年06月06日 AM09:00

X線で診断が難しい骨盤の脆弱性骨折、AIが誤って学習するリスクもあった

兵庫県立大学は5月31日、X線画像を使用して骨盤骨折をより正確に検出するための新しい画像処理AI技術を開発し、検出が困難であった骨折の診断精度を向上したと発表した。この研究は、同大先端医療工学研究所、(はり姫)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

日本を含む多くの国で進む超高齢社会において、高齢者の骨粗しょう症は大きな問題である。骨粗しょう症により、骨が脆くなり、日常的な小さな外力でも骨折が発生しやすくなる。特に、高齢者や基礎疾患を持つ患者にとって、骨盤骨折は死亡率を高める重大な健康問題である。

骨盤の脆弱性骨折は、患者がお尻の痛み(臀部痛)や股の痛み(鼠径部痛)など非特異的な症状を訴えることが多く、X線では骨折が明確に見えないことがあり、診断が難しい。これに加えて、高精度のアノテーションが必要な深層学習において、大量の高精度なアノテーション付き学習データの収集が困難であるため、誤ったアノテーションや数が不十分な学習データによって、骨折がないとAIが誤って学習してしまうリスクも増加する。

3次元CT画像で生成された高品質データ使用、診断性能の高い深層学習法開発に成功

研究グループは、3次元CT画像から生成された高品質な学習データを用いて、骨盤X線の骨折診断性能を向上させる新しい深層学習法を開発した。このモデルは、特に見えにくい脆弱性骨折の検出において、従来のX線画像のみを用いた方法よりも高い精度を達成した。

検証結果によると、この新しい手法は明瞭な骨折および不明瞭な骨折の診断において、それぞれAUROCが0.9337および0.8002という高い値を記録した。従来技術のAUROCが0.8945および0.7549に対して、新技術はそれぞれ4.4%、6.0%の向上を達成した。この技術の応用により、3次元CT画像を補助的に利用することで、深層学習を活用したX線画像診断支援システムが医療現場での診断効率と精度を大幅に向上させることが期待される。

椎体骨折や股関節骨折など他の骨折部位検出に応用することも目指す

今回の研究では、X線画像から特に見えにくい脆弱性骨折を検出する新しい学習法を提案した。次の段階として、この技術の実臨床での有効性を評価するために、複数の医療機関と共同して広範囲にわたる臨床試験を行う。また、がんや感染症など他の疾患を有する患者に対しても、この技術が骨折を効果的に検出できるかを検証する。「この技術を椎体骨折や股関節骨折など他の重要な骨折部位の検出に応用し、医療の質を広範囲に向上させることを目指す」と、研究グループは述べている。

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