主流の7日間評価、患者負担が大きく定着しない現状
畿央大学は5月31日、痛みの概日リズムの評価期間が3日間であっても、従来の7日間の評価から得られた結果と概ね一致することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大ニューロリハビリテーション研究センターの田中陽一客員研究員と森岡周教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Pain Research」に掲載されている。
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慢性疼痛患者に対し、自身で痛み管理を行いながら日々の生活活動や身体運動の適正化を目標に教育的介入を行っていくことは重要であり、より具体的で効率的な教育的介入を行うためには、慢性疼痛患者の痛み概日リズムを把握する必要がある。痛みの概日リズムとは、24時間周期の痛み感受性の変動を意味する。しかしながら、従来痛みの概日リズムの評価期間は7日間が主流となっており、患者負担が大きいことから評価として定着しない現状があった。そこで研究グループは7日間評価と比較した際の3日間評価の妥当性について、カッパ係数を用いて検証した。
金曜~日曜の3日間評価が7日間評価と高い一致度、曜日によって一致度にばらつき
18時、21時の6時点での痛みの評価を7日間実施した。個々の参加者について6時点の痛みスコアを用いてクラスター分析を行い、7日間評価による分類と、各3日間評価(火曜~木曜、金曜~日曜、日曜~火曜)による分類間の一致度を、カッパ係数を用いて確認した。
クラスター(CL)は3つに分類した。CL1は、痛みの強さは起床時に最小で、その後上昇、正午以降はスコア0を超えた。CL2は、起床時と21時にスコア0を上回り、日中は下回った。CL3は、VASスコアは起床時にピークに達し、時間の経過とともに低下、正午過ぎにはスコア0を下回った。
各3日間評価の分類を7日間評価の分類基準と照らし合わせて相違を確認し、7日間評価と各3日間評価の被験者内変動性を調べたところ、金曜~日曜の3日間が最も高いカッパ係数を示した(k=0.77)。次いで火曜~木曜(k=0.67)、日曜~火曜(k=0.34)という一致度であった。先行研究において、カッパ係数が0.58~0.80の間であれば、良好な一致を示すとされており、金曜~日曜、火曜~木曜の3日間評価は7日間評価の結果と一致していると考えられた。しかし、日曜~火曜までの3日間の一致度は低くなっており、研究の結果は、3日間評価の有効性を示すと同時に、特定の曜日によっては一致度にばらつきが生じることも強調する結果となった。
評価時間の短縮は早期介入につながり、患者満足度の向上にも寄与
痛みの概日リズムの評価を短縮できるようになれば、臨床における評価がさらに確立され、痛みのリズムを考慮した疼痛管理が容易になると考えられる。また、評価時間の短縮は早期介入につながり、患者満足度の向上にも寄与すると考えられる。「研究結果は、患者の個人差を考慮し、評価期間を短縮した痛みの概日リズム評価を確立する必要性を示唆している」と、研究グループは述べている。
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