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RSVワクチン「アブリスボ筋注用」発売、母子免疫で乳幼児感染予防-ファイザー

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2024年06月05日 AM09:10

「妊娠24~36週の妊婦」「60歳以上」が適応

ファイザー株式会社は5月31日、RSウイルスワクチン(製品名:アブリスボ(R)筋注用」)を発売した。適応は、「妊婦への能動免疫による新生児及び乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防」および「60歳以上の者におけるRSウイルスによる感染症の予防」。用法・容量は両適応ともに「1回0.5mLを筋肉内に接種」とされている。妊婦の接種時期は、「妊娠24~36週」とされているが、臨床試験で、「妊娠28~36週」に接種した場合に有効性がより高い傾向が認められている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

RSウイルスは世界中に広く分布し、ほぼすべての子どもが2歳までに感染するとされている。乳児の細気管支炎やウイルス性肺炎の主な原因であり、特に生後6か月齢未満で感染すると重症化するといわれている。日本では、毎年約12万~14万人の2歳未満の乳幼児がRSウイルス感染症と診断され、その約4分の1が入院を必要とすると推定されている。RSウイルス感染による2歳未満の乳幼児の入院は、基礎疾患を持たない場合も多く、生後1~2か月時点でピークとなるため、生後早期から予防策が必要とされている。日本ではRSウイルス感染症は感染症法で5類感染症に指定されており、小児科定点医療機関の届出に基づき流行状況が探知されている。

また、RSウイルスは60歳以上の成人でも呼吸器感染症の主な原因のひとつとして、呼吸器系に影響を与え、重篤な転帰となる可能性があり、RSウイルス感染症は慢性閉塞性肺疾患(COPD)やうっ血性心不全などの慢性疾患を悪化させることが報告されている。最近の研究によると、RSウイルスは先進国の60歳以上の成人において年間約47万例の入院と約3万3,000例の死亡原因とされ、日本では約6万3,000例の入院と約4,500例の死亡原因と推定されている。

RSウイルスAおよびBの融合前Fタンパク質を混合した二価ワクチン

同剤は、組換えDNA技術を応用しチャイニーズハムスター卵巣細胞より産生されたRSウイルスAおよびBの融合前Fタンパク質を混合した二価ワクチンである。開発は、米国国立衛生研究所(NIH)による融合前Fタンパク質の結晶構造などに関する基礎研究に基づいている。Fタンパク質はRSウイルスがヒト細胞に侵入する際に利用されるタンパク質であり、研究で、RSウイルスの融合前Fタンパク質をベースとするワクチンが、RSウイルス感染を予防する可能性があることが示唆された。このNIHの発見に基づき、同社は多数の融合前Fタンパク質構造体を評価し、非臨床研究で強力な抗ウイルス免疫応答を誘導するワクチン抗原を特定した。

承認の基となったのは2つの試験である。そのうちの1つ、第3相、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照国際共同試験「MATISSE試験」は、妊娠中の健康な母親と、母親から生まれてきた乳児それぞれ7,000人以上が参加した。接種された母親においては、ワクチンの安全性および免疫原性、乳児においては同剤のRSウイルスを原因とする医療機関の受診に至った下気道疾患の予防に対する有効性、安全性、および免疫原性をそれぞれ評価した。

もう1つの「RENOIR試験」は、第3相、多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照国際共同試験である。約3万7,000人が参加し、同剤とプラセボに1:1の比で無作為割り付けされた。60歳以上の成人に対する同剤のRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防に対する有効性、安全性、免疫原性をそれぞれ評価した。両試験の中間解析結果は2023年4月に「The New England Journal of Medicine」に公表されている。

米国、EU、諸外国でも既承認

同剤は、米国では、母子免疫による6か月以上の乳幼児の予防、および60歳以上における予防について、2022年3月にそれぞれブレークスルーセラピー(画期的新薬)指定を受けた。母子免疫の適応は、米国食品医薬品局(FDA)から2023年8月に承認を取得し、米国疾病管理予防センター(CDC)の予防接種実施に関する諮問委員会(ACIP)の推奨を同年9月に受けている。60歳以上の適応はFDAから2023年5月に承認を取得し、ACIPの推奨を同年6月に受けている。さらにEUでは、母子免疫および60歳以上の適応について欧州医薬品庁(EMA)から2023年8月に承認を取得。その他の国および地域については、2023年9月にアルゼンチン、11月に英国、2024年1月にカナダ、2月にマカオ、3月にオーストラリアにおいても承認されている。

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