疲労の指標として、サイトカイン・酸化ストレスなどを統合的に扱ったものはない
川崎医科大学は5月23日、疲労の新しい評価方法を開発し、疲労を軽減することが期待される香料2種を同定したと発表した。この研究は、同大生化学教室の山内教授、同大衛生学教室西村准教授、塩野香料株式会社の研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
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疲労は主観的な症状だが、効果的に軽減するためには、客観的な方法で評価することが必要だ。客観的な指標があれば、場所や時間が異なっていても疲労度を比較することも可能となる。また、さまざまな疾患においても疲労は重要な症状の一つとなっており、特に、慢性疲労症候群、各種の神経疾患、炎症性疾患、膠原病、がん等においては主要な症状とされている。それぞれの疾患において、神経の興奮状態、炎症や免疫を制御するサイトカイン、酸化ストレスは重要な指標であることが示されていたが、これらを統合的に扱う指標はない。
ジヒドロジャスモン酸メチル・リナロール、疲労軽減を定量的に示した研究はなかった
香料は、人類の歴史の中で古くから使われてきており、安価で安全性の高い化合物だ。フレーバーとして食料品に、フレグランスとして日用品や香水などに0.1%程度~数十%程度添加されている。これまで、疲労を軽減する、リラックスするなどの効果が期待される香料の存在は知られていたが、疲労の数値的な指標や評価方法は限られていた。
研究グループはこれまで、新型コロナウイルスに抗する香料の発見など、香料の機能性を研究してきた。ジャスミンに含まれているジャスモン酸や、ラベンダーやコリアンダーに含まれる成分にはリラックス効果のあることが知られている。これらの精油から得られる化合物、ジヒドロジャスモン酸メチルおよびリナロールについて、どのような疲労回復効果があるのか、定量的に示した研究はほとんどなかった。
疲労によって引き起こされる生体反応、統合的な評価方法を開発
今回研究グループは、ラットへストレスを与えるモデルを用いて、ジヒドロジャスモン酸メチルおよびリナロールが及ぼす影響を評価した。疲労したラットと疲労の無いラットの間で、体重変化を比較すると共に、神経伝達物質(ドパミン、アドレナリン、ノルアドレナリン)、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、IL-10)、免疫機能活性化サイトカイン(IL-2、IL-5、IL-17A)、酸化ストレスマーカー(d-ROM、BAP)を測定し、測定指標間の関連性について統計解析(主成分分析)を行った。その結果、これらの指標には互いに強い関連性があり、疲労を反映した神経-免疫-酸化ストレス統合マーカー(疲労統合スコア)として活用できることがわかった。
ジヒドロジャスモン酸メチル・リナロールに抗疲労作用、臨床研究を計画予定
また、ジヒドロジャスモン酸メチルおよびリナロールには抗疲労作用があることがわかった。特に、ジヒドロジャスモン酸メチルは低濃度で効果があるため、強い抗疲労作用があることが明らかになった。
今回の研究成果は、ヒトの疲労を模したラットを用いた実験を基にデータをまとめたもので、疲労を感じているヒトでの疲労効果を検証したものではない。今後、ヒトを対象にした臨床研究を計画していく予定だ、と研究グループは述べている。
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・川崎医科大学 プレスリリース