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爪幹細胞含む「指先オルガノイド」をヒトiPS細胞から作製-関西医科大

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2024年05月28日 AM09:37

マウスiPS細胞から肢芽を分化誘導させた報告、ヒトiPS細胞に応用

関西医科大学は5月22日、爪成分を作る機能を持った爪幹細胞、およびこれを含有する「」の作製に成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科イノベーション再生医学の服部文幸研究教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

あらゆる年齢のマウスは指の先端を再生でき、ヒトの子どもは軟部組織と骨を再生することができる。マウスを用いた研究で、指先端の再生は切断された指の量に依存することが知られており、再生が成功するのは爪を横切る切断の場合のみで、爪母細胞に近い部分で切断すると指先は再生しない。しかし、大きく切断したマウスの指の先に爪器官を移植すると、末節骨が再生され、指先になることが示されている。

爪母細胞は、分泌因子であるWntを介して指先再生のオーガナイザーとして機能すると考えられる。Wntシグナル伝達アゴニストであるLgr6は、爪母細胞を作る爪幹細胞のマーカーである。つまりWntシグナルは、爪幹細胞自身と指先再生において重要な役割を果たしていると考えられている。また、マウスiPS細胞を用いて肢芽を分化誘導させた報告があり、今回の研究では、ヒトiPS細胞を用いてこの方法を拡張し、指先オルガノイドの作製を目指した。

ヒトiPS細胞から肢芽作製、旋回培養で細胞塊が直径数ミリまで成長

まず、マウスでの報告を参考に、ヒトiPS細胞から肢芽を作製した。当初このまま長期間静置培養を行ったが、細胞塊が大きく成長できないことが問題だった。そこで、旋回培養を採用し、栄養とガス交換を促進することで、長期間肢芽を培養することが可能となり、結果、細胞塊を直径数ミリまで成長させることができた。

成長した肢芽、指発生関連の遺伝子群や爪幹細胞マーカーLgr6などの発現増加も確認

この成長した肢芽の網羅的遺伝子発現解析を行ったところ、形態形成に重要な転写因子であるホメオティック遺伝子の中でも、指先に特異的なHoxD13が強く発現上昇していた。また、骨形成などに重要なPitx1、運動神経の発達に重要なEphA4、指の数の決定に重要なSHH、Gli3など、四肢や指の発生に関連する遺伝子群が強く発現上昇していることもわかった。さらには、爪を構成するハードケラチン群も軒並み発現上昇していた。爪幹細胞のマーカーであるLgr6の発現が分化に伴って増加してくることも定量的PCRにより確認した。免疫染色を用いて、細胞塊の中に、脱核し角質化しつつある、ハードケラチン陽性の細胞集団の存在や、Lgr6陽性細胞の近傍にハードケラチンの塊が存在することも判明したため、この細胞塊を「指先オルガノイド(Digit Organoid)」と呼ぶことにした。

Lgr6発現細胞塊をマウスに移植、ホスト細胞と融合しハードケラチン沈着も確認

さらに、細胞がLgr6を発現すると緑色蛍光タンパク質GFPを発現するように遺伝子導入したiPS細胞を用いて指先オルガノイドの分化誘導を行うと、緑色蛍光を示す細胞を含むオルガノイドが約10~30%存在した。セルソーターを用いて緑色蛍光を示す細胞を濃縮し、細胞塊に再形成した後に、免疫不全マウスの背部皮下に移植した。移入20日後、皮下に小さな塊を確認し、取り出して調査を行うと、ホスト側からの血管と血流が存在し、ヒト細胞で構成された部分とホスト細胞で構成された部分とが融合していることが確認できた。免疫染色によって、ヒト細胞で構成された組織部分にLgr6陽性の細胞の生存が確認され、近傍にハードケラチンの沈着部分が存在した。

抗がん剤治療での変性や生まれつきの欠損など、さまざまな爪の治療に役立つ可能性

ヒトiPS細胞から、爪成分を作る能力を有する爪幹細胞を作製することに初めて成功した。この成果は、抗がん剤治療による爪の変性や、生まれつき爪の無い人の治療に役立つ可能性がある。さらに、網羅的な遺伝子発現パターンから、指先の発生を模倣したオルガノイド(DigitOrganoid)の作製にも初めて成功した。「この成果は将来、指先の再生を促進する新しい形成的再生医療(Plastic Regenerative Therapy)の実現において大きな貢献を果たす可能性がある」と、研究グループは述べている。

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