CARD9バリアント分布は地域的な偏りあり、創始者効果の可能性を示唆
東京医科歯科大学は5月22日、侵襲性真菌感染症を発症した日本人患者2人をCARD9欠損症と同定したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科小児地域成育医療学講座の金兼弘和寄附講座教授、同大大学院医歯学総合研究科発生発達病態学分野の友政弾大学院生の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Immunology」に掲載されている。
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CARD9欠損症は、CARD9の機能喪失型バリアントにより発症する常染色体潜性遺伝の先天性免疫異常症(inborn errors of immunity:IEI)。繰り返す表在性真菌感染症に加えて、中枢神経感染などの侵襲性真菌症もしばしば合併する。北アフリカ、中東、中国からの報告が多く、これまで日本、韓国からの報告は3例ずつのみだった。CARD9バリアントの分布は地域的な偏りがあり、c.865C>Tバリアントは北アフリカ、c.208C>Tバリアントはトルコ、c.820dupバリアントは中国からの報告が多く、それぞれ創始者効果の可能性が示唆されていた。創始者効果は、ある特定の集団で、集団の創始者の遺伝学的な特徴が高頻度に見られる現象のことだ。
東アジアのCARD9欠損症、c.820dupバリアント高頻度同定
今回の研究では、表在性および侵襲性のCandida albicans感染症に罹患した日本人患者2人でCARD9バリアントを同定し、CARD9欠損症と診断した。両患者は、既報告のもう一人の日本人患者と2人の韓国人患者と同様にc.820dupバリアントを保有。1塩基多型(single nucleotide polymorphism:SNP)を用いたハプロタイプ解析により日本人、韓国人、中国人の患者は10kbのハプロタイプが一致していることが確認された。
c.820dupバリアント、2,000~4,000年前の共通祖先由来の可能性
さらに、バリアントの起源を推定する解析により、このバリアントが2,000~4,000年前に発生した可能性が高いことを突き止めた。中国人の患者ではPhialophora属による黒色菌糸症が多いが、日本と韓国における5人の患者はPhilaophora感染症には罹患しておらず、この臨床像の違いは環境要因に起因すると考えられた。
バリアント起源、新石器時代後期~青銅器時代に矛盾せず
現代の日本人と韓国人の多くが、中国北部を起源とする遺伝学的背景を持つとされている。また、新石器時代後期から青銅器時代に、中国北部から韓国、日本への人の移動に伴い、米や言語が普及していったと言われている。同研究で明らかにしたバリアントの起源は、この時期に矛盾しない結果だった。同研究は人類学、遺伝学、医学分野の横断的研究であり、それぞれの分野に貢献できると期待される、と研究グループは述べている。
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