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アルコール代謝遺伝子検査結果に基づく若者への減酒指導は有用な可能性-筑波大ほか

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2024年05月28日 AM09:10

自身のアルコール分解酵素の働きの強さを知ることは、飲酒量に影響するか

筑波大学は5月22日、過剰飲酒習慣のある若年成人を対象に、個々人のアルコール代謝遺伝子検査結果に基づいた減酒指導を行った結果、飲酒量が有意に減少することを確認したと発表した。この研究は、同大医学医療系/健幸ライフスタイル開発研究センターの吉本尚准教授、大脇由紀子客員研究員、三和酒類株式会社、飲酒科学振興協会らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

過剰なアルコール摂取は世界的な公衆衛生の問題となっている。世界保健機関(WHO)をはじめとするいくつかの報告では、過度の飲酒はアルコール依存症などの健康問題を引き起こすだけでなく、家庭内暴力や飲酒運転による交通事故など、他の深刻な問題にもつながることが指摘されており、国連が掲げるSDGsの17目標のうち14に関連している。特に若年者は、けがやアルコール依存症などアルコールの害が出やすいことが報告されている。

2024年2月に公表された国の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、体質の違いによる影響を考慮すること、遺伝子によって規定されるアルコール分解酵素の働きの強さが個人によって大きく異なり、アルコール分解酵素の働きの強さに注意して飲酒を行う必要があるとされている。日本を含めた東アジアにはこの分解酵素が弱い人が一定数存在しているが、個々人が1B型アルコール脱水素酵素()と2型アルデヒド脱水素酵素()という2つのアルコール分解酵素の働きの強さを知ることで、飲酒量に対してどれくらい影響があるのかについては研究がほとんどなかった。そこで研究グループは、日本人の特性に合わせた、個々人のアルコール代謝遺伝子情報を元にした減酒指導をすることで、若年者の飲酒量に与える影響について明らかにするための研究を実施した。

1日の飲酒量が多い20~30代の男女を対象に調査

対象は、同大の大学生、大学院生、職員のうち、20~30歳で、飲酒日の1日飲酒量が男性で純アルコール40g以上、女性で同20g以上の計196人(女性111人、男性85人)。参加者は、アルコール代謝遺伝子情報を含む減酒指導を行う介入群と、パンフレットを配付する対照群の2つの群に無作為に分けられた。

介入群には、事前に参加者自身のアルコール代謝遺伝子検査を受けてもらい、その結果を元にした減酒指導を1回実施した。減酒指導内容は、アルコール分解のメカニズムや飲酒に伴う疾病のリスクと遺伝子タイプ別の注意点、遺伝子タイプに応じたアルコールとの付き合い方などが含まれた。アルコール代謝遺伝子検査はアルコール体質検査キット「」(合同会社ダイバラボ)を用いた。対照群にはアルコールに関する指導パンフレット「大学生のためのアルコール・ハンドブック」を配付した。

研究開始から24週間の間、参加者は毎日アルコール飲料の摂取量をカレンダーに記録。さらに、3か月後と6か月後にAUDIT-C(Alcohol Use Disorders Identification Test -Consumption)質問票に回答した。その後、対照群と介入群の飲酒量やAUDIT-Cのスコアを比較した。AUDIT-Cは、「飲酒頻度」「飲酒日の飲酒量」「一時過剰飲酒頻度」の3問で構成される、過剰飲酒者を把握するための調査票。WHOが開発した10問のスクリーニングツールAUDITの最初の3つの質問になる。スコアが高くなるにつれて、飲酒量が過剰になっていくことを示す。

研究開始3か月後に介入群の飲酒量やAUDIT-Cスコアが有意に減少

その結果、介入群では研究開始3か月後に飲酒日の飲酒量やAUDIT-Cのスコアが対照群と比べて有意に減少した。研究開始6か月後には対照群と比べて介入群で飲酒量減少は見られたが、有意差は消失した。一方、AUDIT-Cのスコアは有意な減少が続いていた。

これらの結果から、過剰なアルコール摂取を減らすための対策として、一人ひとりのアルコール代謝遺伝子情報を含む、個別性を重視した減酒指導が有用である可能性が示唆された。

今後、減酒効果を持続させる方法について追加検証

若年者のアルコールの害を減らすことは地球規模課題の一つである。研究成果は特に日本を含めた東アジアの若年者集団で、アルコール代謝遺伝子情報を含めた減酒指導が飲酒量低減のきっかけになる可能性があることを示した。「アルコール摂取を減らすための有効性が科学的に検証された方法が明らかになることで、過剰なアルコール摂取をしている個人への介入や、政策立案などを通した地域社会への介入が可能になることが期待される。今後は、若年者以外に対するアルコール代謝遺伝子情報を含めた減酒指導の効果や、アルコール代謝遺伝子情報の通達だけで飲酒量に影響を与えるかについて検討するとともに、減酒効果を持続させる方法についても追加検証していく予定」と、研究グループは述べている。

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