遠隔医療のビデオ通話では医師の「背景」が重要
遠隔医療により医師はどこからでも診療することができるようになったが、ビデオ通話の際の背景を医師らしく見えるようにすることで、患者の診療内容やアドバイスへの信頼度が強まることが、米ミシガン大学医学部内科学分野のNathan Houchens氏らによる研究で明らかになった。これは、遠隔診療を行う際には、たとえ診療所や診察室から遠く離れていても、そこにいるかのように見せるべきことを示唆する結果だ。研究の詳細は、「JAMA Network Open」に5月15日掲載された。
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この研究では、ミシガン・メディスンまたは米国退役軍人(VA)アナーバーヘルスケアシステムのいずれかで1年以内に診療を受けた18歳以上の患者1,213人(626人が女性を自認)を対象に、2022年2月22日から10月21日の間に実施された調査結果の分析が行われた。調査では、7種類の異なる環境(医師のオフィス、診察室、壁に卒業証書や資格証明書などが飾られたオフィス、書棚のある自宅オフィス、寝室、キッチン、無地の背景)にいる医師の写真が提示された。調査参加者は、自分の好みの環境を選び、また6つのドメイン(知識の豊富さ、信頼性、思いやり、親しみやすさ、専門性、患者が感じる居心地の良さ)について1〜10点で評価し、複合スコアが算出された。
その結果、複合スコアが最も高かった背景は、卒業証書などを掲示してある医師のオフィスだった(スコアは平均7.8点)。また、医師のオフィス、診察室、書棚を背景にした自宅のオフィス、無地の背景も高評価を得た。これに対して、背景に寝室(平均7.2点)やキッチン(平均7.0点)が映り込んでいるケースの評価は低かった。卒業証書などで飾られたオフィスを好む人の割合は34.7%、医師のオフィスを好む人の割合は18.4%、無地の背景を好む人の割合は14.4%であったのに対し、寝室やキッチンを好む人の割合はそれぞれわずか3.5%と2.0%に過ぎなかった。
Houchens氏は、「患者は、医師の服装やワークスペースがどのようなものであるべきかについての考えをあらかじめ持っている」と述べ、「今回の研究により、患者は、従来、伝統的あるいは専門的と見なされている服装や環境を好むことが明らかになった」と話している。同氏はさらに、「背景の中の卒業証書や資格証明書は、患者が医師に期待する専門知識を想起させる一方で、リラックスしたインフォーマルな家庭環境の背景だと何かが失われてしまうのだろう」と付け加えている。
こうした結果を受けて研究グループは、医師に対して、遠隔診療を行う場合は、オフィスや診察室から行うか、そのような専門的な環境をシミュレートしたバーチャル背景を作成することを推奨している。また、一部のクリニックに設けられている、遠隔医療を行うための専用スペースは、できる限りプロフェッショナルに見えるようにすべきだとも助言している。
Houchens氏は、「この研究結果は、医療従事者や医療システムが気にかけていないような細部を、患者はしばしば気にすることを教えてくれる。患者は、われわれが使う言葉や非言語的な振る舞いを真剣に受け止めるものだと常に念頭に置いておくことが重要だ。また、われわれ自身もそのことを重く受け止める必要がある」と述べている。
▼外部リンク
・Patient Preferences for Telemedicine Video Backgrounds
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