オーラルフレイルは全身筋量・筋力低下との関連報告あり、転倒リスクとの関係は?
大阪公立大学は5月23日、身体的フレイルであること、また、フレイルについての認知度が低いことに加え、オーラルフレイルであることが、その後1年間の転倒に関係していることがわかったと発表した。この研究は、同大都市健康・スポーツ研究センターの横山久代教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Geriatrics」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
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転倒事故は、骨折や長期入院による体力および生活の質の低下を招く。要介護状態に至る主な原因の一つであり、特に高齢者にとって健康上の大きな懸念点だ。少子高齢化による労働人口の減少を背景に、高齢者の労働市場への積極的な参加が今後さらに進むと考えられる一方で、50歳以上の労働者において職場での転倒事故が増加している。そのため、転倒しにくい安全な環境を整えるとともに、転倒の危険を予測し、身体機能の向上をはじめとした予防介入を適切に行うことが重要だ。
フレイルは、加齢とともに心身のはたらきが低下した状態のこと。身体能力や運動機能が低下した状態を指す身体的フレイルや、歯の喪失や口周り、舌、のどの筋力低下により、噛む力や飲み込む力が衰えた状態のオーラルフレイルなどがある。これまでに全身の筋量・筋力低下とオーラルフレイルは関連することが報告されているが、オーラルフレイルと転倒リスクとの関係はわかっていなかった。これらが関連することが明らかになれば、オーラルフレイルの人は転倒しやすいと見なすことができ、早期に転倒予防対策を講じることができると研究グループは考えた。
スマホアプリ利用者対象、50歳以上7,591人のアンケート回答結果を分析
今回の研究では、大阪府民の健康をサポートするために開発されたアプリケーション「おおさか健活マイレージ アスマイル」の利用者に対して、2020年2月と2021年2月に実施した同じ内容のwebアンケートに、2年連続で答えた50歳以上の計7,591人(男性3,021人、女性4,570人、平均年齢62歳)の回答結果について分析。アンケートでは、要介護状態となる恐れが強い高齢者を把握するために厚生労働省が作成した「基本チェックリスト」の25項目(過去1年間における転倒事故発生の有無を問う設問を含む)に加え、運動習慣やフレイルについての認識の有無に関して質問した。既報に基づき、「基本チェックリスト」の口腔機能、運動機能に関する設問のうち、既定の項目数以上に該当する者をそれぞれ、オーラルフレイル、身体的フレイルとした。
身体的フレイルあり・フレイル認知度低+オーラルフレイルあり、1年間の転倒事故発生率「高」
2020年の調査では、全体の17%がオーラルフレイルに該当し、年齢が高いほど該当者の割合が大きいことが判明。2021年の調査では、全体の19%が過去1年間に転倒を経験したと回答した。ロジスティック回帰分析の結果、身体的フレイルがあることや、フレイルの認知度が低いことに加え、オーラルフレイルであると(オッズ比1.6)が、その後1年間の転倒事故発生率が高いことがわかった。
オーラルフレイル判定で転倒リスクを把握、転倒予防につながる可能性
同研究結果より、簡単なチェックリストを用いたオーラルフレイルの判定により、転倒リスクが高い人を把握し、転倒予防につなげられる可能性が示された。健康診断などでチェックリストを適用し、受診者に結果をフィードバックすることで、転倒防止への意識を高められることが期待される。今後は、オーラルフレイルであると転倒しやすいというメカニズムや、オーラルフレイルを改善すると転倒リスクが減少するかなどについて、研究を続ける必要がある、と研究グループは述べている。
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