PNH標準治療である「抗補体C5抗体」で国内初の皮下注射剤
中外製薬株式会社は5月22日、pH依存的結合性ヒト化抗補体(C5)モノクローナル抗体「ピアスカイ(R)注340mg」(一般名:クロバリマブ(遺伝子組換え)点滴静注・皮下注)(以下、ピアスカイ)について、「発作性夜間ヘモグロビン尿症」を効能または効果として薬価収載され、販売を開始したと発表した。
PNHは、PIG-A遺伝子に後天的に変異が生じた造血幹細胞がクローン性に拡大することにより、自己補体による血管内溶血を生じる造血幹細胞疾患。ヘモグロビン尿、血栓症などPNH特有の溶血に起因する症状と、再生不良性貧血と同様の造血不全症状の二面性を持つが、症状は患者により異なる。合併症として、慢性腎臓病や肺高血圧症などを併発する場合がある。日本では指定難病(指定難病62)に数えられる希少疾患であり、PNHの令和4年度末の医療受給者証保持者数は1,035人だった。
ピアスカイは、同社のリサイクリング抗体(R)技術を用いている。一般的な抗体では抗原に1回しか結合することができないのに対し、ピアスカイは繰り返し抗原に結合するよう改変することで低用量での補体阻害が可能となり、4週ごとの皮下投与を実現している。また、皮下注射のため、患者と介護者の負担軽減が期待されている。
今回の承認はC5阻害剤による治療歴のないPNH患者を対象とした「COMMODORE2試験」、および既存のC5阻害剤からピアスカイに切り替えたPNH患者を対象とした「COMMODORE 1試験」などの成績に基づいている。いずれもロシュ社との協働による国際共同第3相臨床試験であり、国内からも参加している。
なお、リサイクリング抗体技術を適用した治療薬の承認は、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD:Neuromyelitis Optica Spectrum Disorders)に対する治療薬であるエンスプリング(R)に続き2剤目となる。
ピアスカイの発売は日本が初、欧米でも承認審査が進行中
同社代表取締役社長CEOの奥田修氏は「PNHの標準治療である抗補体C5抗体において、皮下投与可能な薬剤はピアスカイが国内初だ。また、本剤の発売も日本が初となる。現在、欧米でも承認に向けた審査が進行中だ。さまざまな疾患の影響を受ける患者に新たな価値を継続的に提供していけるよう、研究開発を一層推進していく」と、述べている。
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・中外製薬株式会社 プレスリリース