NEP・RAASを同時阻害、降圧効果や心肥大・線維化抑制などの作用に期待
大塚製薬株式会社とノバルティス ファーマ株式会社は5月22日、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)「エンレスト(R)粒状錠小児用12.5mg、31.25mg」(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)について、小児慢性心不全に対する小児専用剤形として発売したことを発表した。
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小児慢性心不全は、心臓機能障害により静脈圧上昇と心拍出量低下をきたし、身体各組織の酸素需要に見合う血流が保持できない状態で、運動能低下、不整脈頻発、生存率低下をきたす症候群。生まれつきの心疾患や心筋症が原因になることが多く、息苦しさなどの症状が出るだけでなく、病状が進むと心肥大や心拡大などが進行し、不整脈や突然死を引き起こすこともある。そのため、早期に診断して適切な治療を行うことが大切だ。
エンレストは、ネプリライシン(NEP)とレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)を同時に阻害する作用機序を有するARNI。RAASを阻害することにより、アンジオテンシンIIによって引き起こされる血管収縮、体液貯留、交感神経活性が抑制され、降圧効果を示す。また、NEPを阻害することで、生理活性を有するナトリウム利尿ペプチド(NP)の作用が増大し、血管拡張、利尿、尿中ナトリウム排泄、交感神経系抑制、心肥大抑制および線維化抑制等の多面的な作用を示す。NEPとRAASの同時阻害では、NEP阻害に伴うRAAS活性化がもう一方のRAAS阻害作用により抑制されるため、NEP阻害によるベネフィットを最大限引き出すことが期待されている。
同剤は、2015年7月に最初に米国で承認されて以来、慢性心不全治療薬として世界120か国以上で承認されている。ロシア、中国等では高血圧症での承認も取得。慢性心不全の小児適応は、2024年2月現在、米国および欧州を含む世界40か国以上で承認されており、欧州では「エンレスト粒状錠」も承認されている。日本においては、「エンレスト錠」で「慢性心不全」を効能または効果として2020年6月に、「高血圧症」を効能または効果として2021年9月に、小児における「慢性心不全」の効能または効果、用法及び用量が2024年2月に、「粒状錠小児用」が2024年3月に承認されている。
さまざまな体重に対応可能、調剤の簡便化に期待
1歳以上の小児慢性心不全の効能・効果と用法・用量で2月9日に承認を取得している「エンレスト錠50mg、100mg、200mg」では、体重が50kg未満の場合、薬剤師が粉砕懸濁し用量調整を行うケースもあった。「エンレスト粒状錠」では、12.5mgと31.25mgの2種の用量を組み合わせることにより、さまざまな体重に対応が可能となる。このことから、調剤の簡便化に貢献が期待される。
小児でも飲みやすい小さな粒状の錠剤、食べ物に混ぜて服用も可
小児でも飲みやすい小さな粒状の錠剤であるため、カプセル型容器から取り出した錠剤を食べ物に混ぜて服用することが可能だ。また、一般的な錠剤のようにカプセル型容器から取り出し、水で服用することも可能。
日本国内における医療従事者へのエンレストの情報提供活動については、共同プロモーション契約に基づき、ノバルティス ファーマと大塚製薬が実施していくとしている。
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