同学会は、2023年9月からワーキンググループを立ち上げ提言をまとめた。丸岡弘治氏(介護老人保健施設横浜あおばの里薬剤部)は17日に都内で記者会見し、「誤薬など医療安全の向上や、本人・職員の負担軽減がメリットになる」と述べた。ただ、注意点として、全ての処方について服薬回数を減らせるわけではなく、「医師や薬剤師の指導を受ける必要がある」と話した。
通常、高齢者のポリファーマシー対策は、処方見直しにより薬剤種類数を減らす減薬の取り組みが多いが、今回の提言では処方見直しと並行して服薬回数見直しも盛り込んだ。
高齢者施設では、服薬介助を要する入所者・入居者が約60%と報告されており、1回の服薬介助に対する介助者の負担感は強い。夜間の従事者は昼間より少ないにも関わらず、入所者・入居者の服薬タイミングは朝・夕食後の夜勤帯に集中している現状も課題となっている。
提言した服薬簡素化では、服薬介助に当たる看護師、介護職の配置や業務時間を考慮し、服薬を昼に集約することによって、介助者の負担軽減だけではなく、服薬介助に割いていた時間を他業務に充てることが可能になる。
高齢者施設での服薬簡素化を実現させるために、フローチャートも作成。▽服薬簡素化の対象となる薬剤を特定▽服薬簡素化の実施可能性を検討▽他職種で変更の協議▽本人やキーパーソンへの説明▽処方変更の実施▽継続的な経過観察・他職種で評価――の六つの段階で服薬簡素化を検討する。さらに、退所、退居、入院先にも服薬簡素化した事実を診療情報提供書や薬剤サマリー、看護サマリー等で共有する。
一方、1日2~3回投与から1日1回にまとめる場合、分割投与が重要なパーキンソン病薬のように服薬回数をまとめることが好ましくない薬剤がある点に留意するよう明記。持続性製剤への変更を検討する場合には、半減期の延長により副作用等が発現した場合、症状消失までの期間延長に注意するとした。
用法用量が規定されている薬剤については、薬剤の特性により服薬タイミングが変更できないことに注意するほか、服薬簡素化により一度に服用する薬剤数が多くなることで、誤嚥や薬物相互作用のリスク、服薬時間変更による副作用リスクの上昇可能性も注意点に挙げた。
ワーキンググループの秋下雅弘代表は、「朝に薬を飲んでもらうために職員を朝のシフトに多くしている施設では、昼にシフトを変えないといけない。できる施設からやってもらいたい」と述べた。