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小児湿疹の発症に妊娠中の室内環境因子が関連、湿度や床材など-北大

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2024年05月20日 AM09:10

出生前の室内環境要因は生後の小児湿疹発症リスクになるか?

北海道大学は5月10日、生後3歳までの小児湿疹に影響を及ぼす出生前の室内環境因子を明らかにするため、妊娠中の室内環境とエコチル調査参加者の1歳半、3歳時点の小児湿疹の発症の関連について解析した結果を発表した。この研究は、同大エコチル調査北海道ユニットセンターの岸玲子特別招へい教授、アイツバマイゆふ特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Environmental Research」に掲載されている。

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、)は、胎児期から小児期にかけての化学物質の曝露やその他の環境要因が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。さい帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

小児湿疹は、子どもの生活の質(QOL:Quality of Life)を低下させ、その後の成長発達にも関わる疾患だ。その病因には、、皮膚表皮バリア機能低下、免疫異常の他、身の回りの環境(環境要因)があるとされている。環境要因のうち、子どもが過ごしている住居の湿度環境の悪化(カビ、結露、水漏れ等)がアトピー性皮膚炎や小児湿疹の発症要因の一つであることは、多くの疫学研究で報告されている。しかし、出生前(妊娠中)のどのような室内環境要因が生後の小児湿疹のリスクとなるかについて遺伝的要因や生後の室内環境要因の影響を考慮して検討した研究はほとんどない。

1歳半・3歳の小児湿疹の発症に関連する妊娠中の室内環境要因を解析、エコチル調査より

そこで、今回の研究は、1歳半と3歳までの小児湿疹発症に関連する妊娠中の室内環境要因を明らかにすることを目的とした。同研究では、妊娠中の質問票調査に回答したエコチル調査参加者(10万4,062人)から2011〜2014年に生まれた子ども(9万6,230人)のうち、出産後に引っ越しした者を除外した母児ペアを1歳半(7万1,883組)、3歳(5万8,639組)まで追跡。妊娠中のどのような室内環境要因が1歳半および3歳までの小児湿疹の発症と関連するかを明らかにするため、多重ロジスティック回帰分析を用いて検討した。

リスクは「高いカビ指数」「複合フローリング材使用」など

小児湿疹の発症率は1歳半で11.5%、3歳では12.2%だった。妊娠中のカビ指数(カビの発生がある部屋数:0〜5段階)が高いこと、ガス暖房の使用、複合フローリング床材の使用、殺虫剤の頻用が1歳半時点の湿疹のリスクを1.2〜1.5倍高める結果だった。3歳では高いカビ指数と複合フローリング床材の使用について、湿疹との関連が認められた。これは特に、両親共にアレルギー歴がない場合で顕著だった。

1歳半までは妊娠中の湿度環境・床材影響が発症に大きく寄与の可能性

小児湿疹のリスク要因である遺伝的要因や生後の室内環境要因(家庭内喫煙者、カビの発生)の影響を取り除いても、妊娠中の高いカビ指数と複合フローリング床材の使用と1歳半時点の湿疹の関連が認められた。しかし、この関連は3歳では認められなかった。これは、1歳半までは両親のアレルギー歴や生後の室内環境に関わらず、妊娠中の湿度環境および床材の影響が小児湿疹の発症に大きく寄与している可能性を示しており、一方で、3歳では妊娠中よりも生後の室内環境要因の影響の方が強いことを示唆している。

出産前からの適切な湿度環境維持が小児湿疹予防につながる可能性

同研究では、妊娠中の室内の湿度環境の悪化と複合フローリング材の使用が小児湿疹発症のリスクとなることを明らかにした。住居の床材は容易に変更できないが、出産前から適切な湿度環境の維持を心がけることが小児湿疹の予防につながる可能性がある。なお、今回の解析に用いた情報は全て自記式質問票から得られた情報であり、小児湿疹や室内環境について医師の診断や環境測定を行ったものではない。今後、より定量的に評価された情報を用いた結果の検証が期待される、と研究グループは述べている。

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