個人「食事の質」変動を規定する食事場面の特性、明らかでなかった
東京大学は5月10日、30~76歳の日本人222人を対象に詳細な食事記録調査を行ない、食事の種類(朝食、昼食、夕食)、同席者の有無および食事場所が食事の栄養学的質と関連していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科公共健康医学専攻社会予防疫学分野の篠崎奈々助教、村上健太郎教授、佐々木敏東京大学名誉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Nutrition」に掲載されている。
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食事の栄養学的質が低いと、心血管疾患、がん、2型糖尿病などの疾患リスクが増加すると考えられている。誰とどんな状況で食べるかといった食事場面の特性は、食事の栄養学的質と関連する重要な要因だ。例えば、外食は脂質や糖類が多い食事につながることが知られている。これまでの研究では、異なる個人での食事の質と食事場面の特性との関係が主に検討されてきた。しかし、同一の個人においても食事の質はさまざまであり、個人内での食事の質の変動を規定する食事場面の特性については、十分に明らかになっていなかった。
食事の質と食事場面の特性との関連、生態学的瞬間評価で検討
このような関連性を探るためには、参加者の行動に関する情報をリアルタイムで繰り返し収集する「生態学的瞬間評価」という手法が役に立つと考えられる。そこで、今回の研究では、食事の質と食事場面の特性との関連を、生態学的瞬間評価を用いて検討することを目的とした。同研究の参加者は、30~76歳の日本人男女各111人。秤量法による食事記録を依頼し、4日間の飲食内容をすべて計量、記録してもらった。さらに、各食事場面の特性として、勤務日かどうか、食事の種類(朝食/昼食/夕食)、同伴者の有無、食事場所(自宅/外出先)、食事中のスクリーン使用(スマートフォンの操作やテレビ視聴)の有無を記録してもらった。登場回数が少なかった間食を除外した後、男性1,295食、女1,317食を解析対象とした。各食事の栄養学的質の評価には、Healthy Eating Index-2020(HEI-2020)を用いた。この指標は、米国人のための食事ガイドラインの順守の程度を測る指標であり、100点満点で表され、点数が高いほうが食事の栄養学的質が高いことを意味する。
男性の食事の質は朝食より昼食「低」夕食「高」、一人より誰かと一緒で「高」
研究の結果、男性においては朝食に比べて昼食の食事の質が低く、夕食の食事の質が高いことが明らかになった。また、男性は、一人で食べるときよりも誰かと一緒に食べるときのほうが食事の質が高いことが示された。
女性の食事の質は朝食より夕食「高」、自宅での食事よりも外食で「高」
女性に関しては、朝食に比べて夕食の食事の質が高く、自宅での食事よりも外食のほうが食事の質が高いことがわかった。勤務日かどうかと食事中のスクリーン使用の有無は、食事の質との間に有意な関連が見られなかった。
高い食事の質と関連は「高年齢・非喫煙者」、男女とも
個人の特性に関しては、男女ともに年齢が高いことと非喫煙者であることが高い食事の質と関連することがわかった。さらに、女性ではBMI(ボディマスインデックス、体格指数)が高いほど食事の質が高いことがわかった。
食事の質改善の栄養教育・介入への貢献に期待
同研究は、成人における食事の栄養学的質と食事場面の特性との関連を、生態学的瞬間評価を用いて調べた初めての研究だという。同研究結果は、食事の質を改善するための栄養教育や介入に貢献することが期待される、と研究グループは述べている。
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