バルーン肺動脈形成術後の再発については不明だった
国立循環器病研究センターは5月8日、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)に対するバルーン肺動脈形成術を受けた262症例を調査し、治療血管の再狭窄・閉塞による症候性再発性肺高血圧症は非常にまれで、再発性肺高血圧症のほとんどは軽度の悪化のみで予後は良好であったことを明らかにしたと発表した。この研究は、同センター肺循環科の髙野凌医師、青木竜男医師、大郷剛特任部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「The journal of Heart and Lung Transplantation」に掲載されている。
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CTEPHは、器質化した血栓による慢性的な肺動脈狭窄または閉塞を原因とした肺高血圧症。バルーン肺動脈形成術は、末梢型のCTEPHや患者にとって手術がハイリスクであるために肺動脈内膜摘除術が困難なCTEPH症例において血行動態や運動耐容能を改善させ、治療後の長期予後が良好であることが知られている。一方、治療後の再発については明らかになっていない。
262例を調査、追加治療を要した再発群と非再発群を比較
研究グループは、2009年〜2020年にかけて同センターで肺動脈内膜摘除術が困難なCTEPHに対してバルーン肺動脈形成術を施行された262例を調査した。バルーン肺動脈形成術後の初回のカテーテル検査で肺高血圧症が正常化(平均肺動脈圧<25mmHg)したものの、フォローアップのカテーテル検査で肺高血圧症の再発(平均肺動脈圧≧25mmHg)があり、バルーン肺動脈形成術または肺血管拡張薬での追加治療を要した患者を再発群として、再発群と非再発群を比較した。
5年時点での再発の状態占有確率は9.0%、再発群のほとんどは軽度の悪化のみで予後良好
最終的に158例が解析対象となり、そのうち11例が再発群に該当した。5年時点での再発の状態占有確率は9.0% (95%CI:5.0-18.9%)だった。再発群の患者のうち1例は血行動態と運動耐用能の著明な悪化を認め、肺動脈造影検査では以前治療した肺動脈の再狭窄・閉塞病変を認めた。一方、再発群のその他の10例では血行動態や運動耐容能の悪化は軽度で、肺動脈造影検査で残存狭窄・閉塞病変はあるものの新規病変や再狭窄・閉塞病変は認めなかった。さらにバルーン肺動脈形成術または肺血管拡張薬による追加治療により再発群も非再発群と同等の血行動態へ改善し、その予後は良好だった。
「今後は、再発性肺高血圧症を適切に抽出するためのフォローアップ方法と適切な治療介入方法の検討が必要」と、研究グループは述べている。
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