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BRAF遺伝子Thr599dup変異、分子標的薬の治療標的となる可能性-浜松医大

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2024年05月15日 AM09:20

代表的なV600変異の他、クラスIのBRAF変異は存在する?

浜松医科大学は5月8日、包括的がんゲノムプロファイリング検査で同定されたBRAF遺伝子の希少変異であるThr599dup変異の機能を明らかにしたと発表した。この研究は、同大内科学第二講座の渡邉裕文医師(大学院生)、井上裕介助教、須田隆文教授(研究当時、現:理事・副学長)らの研究グループによるもの。研究成果は、「JCO Precision Oncology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

BRAF遺伝子は重要なドライバー遺伝子の一つであり、その変異は種々のがん種において認められる。BRAF変異は、「キナーゼ活性」や「上流からのシグナルに対する依存性」、「二量体形成の有無」等により3つのクラスに分類される。最も代表的なBRAF遺伝子変異であるV600E変異は上流のシグナルに非依存的に単量体でMAPK経路を恒常的に活性化させることが知られ、クラスI(がん細胞の増殖や腫瘍の成長を促進する可能性が高い変異)に分類される。

V600E変異陽性肺がんに対しては、単量体のBRAFを治療標的とするダブラフェニブが、MEK阻害薬であるトラメチニブとの併用療法として承認されている。しかし、V600EやV600Kに代表されるV600変異の他にもクラスIに分類されるBRAF変異が存在するかについては明らかではなかった。

包括的がんゲノムプロファイリング検査で同定した希少なBRAFThr599dup変異を解析

近年、がん関連遺伝子異常を網羅的に解析する遺伝子パネル検査が普及し、臨床現場において積極的に実施されるようになっている。今回の研究は、包括的がんゲノムプロファイリング検査で肺がん検体より同定された希少なBRAFThr599dup変異の機能と分子標的薬の有効性を、BRAFV600E変異を比較対照として明らかにすることを目的として行われた。野生型BRAF、およびBRAFV600E、BRAFThr599dupをマウス由来proB細胞株(Ba/F3細胞)とヒト由来正常気道上皮細胞株(BEAS-2B細胞)に発現させ、BRAFのキナーゼ活性やがん化能の評価、およびダブラフェニブやトラメチニブに対する感受性を検証。さらに、BRAFの二量体形成パートナーとなる野生型のBRAFおよびCRAFをCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトすること、およびBRAFの二量体形成を阻害するBRAF遺伝子変異(R509変異)の追加導入により、BRAFThr599dupの二量体形成の必要性を評価した。

BRAFThr599dupはBRAF阻害剤ダブラフェニブに高い感受性、クラスI変異に分類

Ba/F3細胞は、培養液にIL-3が存在しないと生存できない性質を有しているが、ドライバー遺伝子が導入されるとIL-3非依存性に増殖を示すことが可能になる。この性質を利用し、研究グループはBRAFThr599dupがBRAFV600Eと同様に、MAPK経路の下流分子であるMEKやERKのリン酸化を介して、Ba/F3細胞においてIL-3非依存性の増殖を強力に引き起こすことを明らかにした。

さらに、BEAS-2B細胞において、BRAFThr599dupはBRAFV600Eと同等の腫瘍形成能を示すことも明らかにした。BRAFThr599dupはBRAFV600Eと同様に、単量体でドライバー遺伝子としての機能を発揮しており、そのため単量体のBRAFを標的とするダブラフェニブに対して高い感受性を示すことを示した。以上より、研究グループはBRAFThr599dupp変異がBRAFV600E変異と同様にクラスIのBRAF変異に分類されることを提唱した。

BRAFThr599dup変異の機能、引き続き知見の集積が必要

現在、分子標的薬の使用が承認されているBRAF変異は、肺がんにおいてはBRAFV600E変異のみだが、今回の研究結果から、BRAFThr599dup変異も分子標的薬の有望な治療標的となりうることが示された。分子標的治療の有効性がすでに確立している代表的な遺伝子変異以外の治療可能な希少変異の検出のため、今後も積極的な包括的がんゲノムプロファイリング検査の実施が望まれるとともに、同定された希少変異の機能について引き続き知見の集積が必要と考えられる、と研究グループは述べている。

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