前かがみになると息切れを感じる症状、正確な頻度や心不全の予後への影響は不明
順天堂大学は5月9日、高齢心不全患者におけるベンドニア(体を前に曲げた時に患者が呼吸困難を訴える症状)の頻度とその予後を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科循環器内科学の中出泰輔大学院生、末永祐哉准教授、鍵山暢之特任准教授、前田大智非常勤助教、藤本雄大大学院生、堂垂大志非常勤助教、砂山勉非常勤助教、南野徹教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Preventive Cardiology」にオンライン掲載されている。
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心不全は世界的な健康問題としての注目を集めており、世界中の多くの人々に影響を与えており、多くの心不全患者が日常的に息切れを経験する。「ベンド二ア」とは、心不全を有する人が前かがみになった時に息切れを感じる症状のことである。これまでの調査では、心不全の患者の中でベンド二アを訴える頻度(有病率)は18%から49%と幅広く報告されていたが、正確な有病率はまだ明らかにされていない。また、ベンド二アが予後に与える影響に関するデータも限られていた。研究グループは、心不全で入院した高齢患者(65歳以上)におけるベンドニアの有病率、臨床的特徴、予後などを網羅的に検討することを目的として、2つの前向き多施設レジストリのデータを用いて解析を実施した。
2つの前向き多施設レジストリデータを解析、ベンドニアの頻度は3~5%
今回、2016年から2018年にかけて国内15施設において急性非代償性心不全で入院し、独歩退院が可能となった65歳以上の心不全患者を前向きに登録した「FRAGILE-HF」のデータと、2018年から2019年にかけて国内4施設で同じ基準で登録された「SONIC-HF」のデータを統計的に解析した。
FRAGILE-HFの1,243人の患者(中央値年齢81歳、男性57.2%)とSONIC-HFの225人の患者(中央値年齢79歳、男性58.2%)のデータが分析に用いられた。分析の結果、ベンド二アはFRAGILE-HFでは31人(2.5%)、SONIC-HFでは10人(4.4%)の患者に見られた。
ベンド二アの有無が予後と関連、既存リスクモデルに追加で予後予測能改善
両方のデータを通じて、ベンド二アを有する患者の特性は類似しており、体重指数(BMI)やニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスによる重症度がより高いことがわかった。さらに、2年間の追跡調査では、ベンド二アを有する患者はない患者に比べて生存率が低いことがわかった。単変量および多変量のCoxモデルのいずれにおいても、ベンド二アは死亡と有意に関連しており、心不全患者の死亡を予測する既存のリスクモデルにベンド二アの有無を追加することで、予後予測能が改善された。
高齢心不全の予後予測に有用なツールとなりうる可能性
今回の研究では、高齢心不全患者においてベンドニアの有無が予後を左右する可能性が示唆された。ベンド二アの評価は、簡単でコストを節約することができ、予後不良の予測ツールとして機能する可能性がある。
「ベンド二アを早期に特定し、適切な介入を行うことで心不全患者の予後にどのような肯定的な影響を与えることができるかといったベンド二アの早期発見とその対応策に関する研究が期待される」と、研究グループは述べている。
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