医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > テクノロジー > 心房細動治療システム「PulseSelect PFAシステム」国内承認-日本メドトロニック

心房細動治療システム「PulseSelect PFAシステム」国内承認-日本メドトロニック

読了時間:約 3分10秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2024年05月14日 AM09:10

既存のカテーテルアブレーション、標的の心臓組織周囲を損傷する合併症リスクが課題

日本メドトロニック株式会社は5月10日、「PulseSelect(TM) Pulsed Field Ablation(パルスセレクトパルスフィールドアブレーション)システム」が、薬剤抵抗性の再発性症候性発作性心房細動の治療、および薬剤抵抗性の症候性持続性心房細動の治療に用いるシステムとして薬事承認を取得したと発表した。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心房細動は、潜在的な患者を含め患者数が最も多い不整脈。日本国内では100万人超、世界で6,000万人以上が罹患していると推定されている。心房細動治療には、薬物治療とカテーテルアブレーションがある。カテーテルアブレーションは、カテーテルを脚の付け根から血管(静脈)を通じて心臓に入れ、心房細動の原因となる不規則な電気信号の発生部位を焼灼(アブレーション)することで、異常な電気信号の流れを遮断する治療法だ。

既存のカテーテルアブレーションには、主に高周波電流を用いる方法と冷却剤を用いる方法がある。高周波電流を用いる方法では、心臓内のカテーテル電極と患者の体表面に貼り付けた対極板の間に高周波電流を流し、組織中に発生した熱により焼灼巣(リージョン)をつくることで、異常な電気信号を遮断する。一方、冷却剤を用いる方法では、主にバルーン型のカテーテルが用いられ、冷却されたバルーンを組織に押し当てることで、組織中の熱を奪い、リージョンをつくる。これらの治療の有効性と安全性は、テクノロジーの発展とともに向上している。しかし、いずれも組織内を伝わる熱的な作用でリージョンをつくるという特性上、標的である心臓組織を変性させるのみならず、その周囲にある食道や横隔神経、肺静脈などを損傷してしまう合併症リスクが課題とされてきた。

心臓にのみリージョン形成・合併症リスク低減に期待、パルスフィールドアブレーション

この潜在的な合併症リスクを低減するために登場した新たなカテーテルアブレーションが、パルスフィールドアブレーションだ。既存のカテーテルアブレーションが、熱の力を利用するのに対して、パルスフィールドアブレーションは電気の力を利用する。パルスフィールドアブレーションでは、カテーテル電極にパルス電圧をかけることで電極周囲に電場(パルスフィールド)を形成し、このパルスフィールドが細胞に作用を及ぼすことでリージョンをつくる。先行研究により、心筋細胞は、横隔神経や食道、肺静脈を構成する細胞に比べて、パルスフィールドに対する影響をより受けやすいことが示されている。パルスフィールドアブレーションでは、この特性を利用することで、心臓にのみリージョンを形成して治療の目的を達成しながら、食道や横隔神経、肺静脈といった周辺組織に関する合併症の発生リスクを低減することが期待されている。

国内初参加の国際共同治験、治療後12か月間の治療成功率は発作性心房細動群66.2%、持続性心房細動群55.1%

同社は、2006年から不可逆的電気穿孔を外科手術に応用するための研究を開始。そして、2014年からは心臓内アブレーションへの応用に関する研究に移行し、PulseSelect PFAシステムの礎を築いてきた。PulseSelect PFAシステムは、アブレーションと診断の両機能を備えたPulseSelect PFA Loopカテーテルと、パルス電圧を送出するためのPulseSelect PFAジェネレータによって主に構成される、心房細動治療用のアブレーションシステムだ。

同システムを用いたアブレーションの発作性および持続性心房細動患者に対する安全性と有効性を評価するため、日本を含む9か国において、国際共同治験のPULSED AF試験が実施された。同試験は、日本国内の施設が初めて参加した、パルスフィールドアブレーションに関する国際共同治験。同試験のピボタル段階には、米国、欧州、カナダ、オーストラリア、日本が参加。同システムを用いてアブレーション治療を行った発作性心房細動150症例(日本登録症例:16症例)と持続性心房細動150症例(日本登録症例:16症例)を解析した。主要有効性評価(治療後12か月間の治療成功率)は、発作性心房細動群66.2%、持続性心房細動群55.1%。両群ともに予め設定した性能目標(発作性50%、持続性40%)を達成したことが示された。また、主要安全性評価(治療後6か月の間に発生した重篤な有害事象の発生率)は、発作性心房細動群及び持続性心房細動群ともに0.7%。予め設定した性能目標(13%)を達成したことが示された。

より多くの患者が根治を目指す治療を受けられることに期待

東京慈恵会医科大学の山根禎一教授は、「パルスフィールドアブレーションに期待する点は、心筋組織への選択性が高く、周辺組織損傷の発生率が低減されるという点。これを機に、心房細動患者にとって治療の選択肢が広がり、より多くの患者が根治を目指す治療を受けられることを期待している」と、次のように述べている。同社は、今後保険診療下で同治療を提供できるよう保険適用に向けた手続きを開始している、としている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 テクノロジー

  • 医療面接のトレーニングができる生成AI搭載人型ロボットを開発-関西医科大ほか
  • 手話単語、AIによる新認識手法を開発-大阪公立大
  • FACEDUO「認知症ケア支援VR」発売-大塚製薬ほか
  • モバイル筋肉専用超音波測定装置を開発、CTのように広範囲描出可能-長寿研ほか
  • ヒトがアンドロイドの「心」を読み取り、動きにつられることを発見-理研