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IBD新規治療につながる時計遺伝子同定、炎症抑制型マクロファージ増加に関与-山口大

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2024年05月14日 AM09:30

免疫系との関連示唆される時計遺伝子「」、IBD病態に関与するのか?

山口大学は5月7日、マクロファージにおける出力系時計遺伝子「E4BP4」が、大腸炎の病態改善に貢献することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科病態制御内科学講座(第三内科)の研究グループ(梶邑泰子診療助教、田口昭彦講師・責任著者、太田康晴教授)と、システムズ再生・病態医化学講座の清木誠教授、浅岡洋一講師、微生物学講座の柴田健輔講師らの共同研究によるもの。研究成果は、「Communications Biology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

)は、消化管に原因不明の炎症や潰瘍を起こし、出血、下痢、体重減少、発熱などのさまざまな症状を示す病気の総称で、主に難病に指定されている潰瘍性大腸炎とクローン病が含まれる。厚生労働省の統計によると、日本でも潰瘍性大腸炎患者が約22万人、クローン病患者が約7万人と報告されており、近年増加傾向が続いている。

IBDの発症や進行には遺伝的素因や食事やストレスなどの環境因子が複合的に関与することがわかっているが、特定の原因は明らかになっていない。現在、治療は主に5アミノサリチル酸製剤やステロイド剤、免疫抑制剤などの内科的治療や生物学的製剤により行われ、必要に応じて外科的処置が適応になることもあるが、根治療法には至っていない。

一方、地球上のあらゆる生物に備わっている体内リズムは、時計遺伝子によって調律されている。体内リズムが乱れると、マクロファージなどの免疫細胞が異常に活性化され、IBDを引き起こすと考えられている。「E4BP4」はこれまでの研究で、数ある時計遺伝子の中でも免疫系と密接な結びつきがあることが示唆されていたが、マクロファージでの具体的な役割は明らかにされていなかった。

マクロファージでE4BP4高発現のマウス、大腸炎からの回復早い

E4BP4の役割を解明すべく、研究グループはマクロファージでE4BP4の発現が高まるマウス(以下E4BP4マウス)を作製したところ、E4BP4マウスは大腸炎からの回復が早いことが判明した。

マクロファージは炎症を誘導するものと抑制するものの、相反する2つのタイプに活性化できることが大きな特徴だが、E4BP4マウスの大腸では炎症抑制型マクロファージの集団が増加していることが判明した。

E4BP4の発現を高めたマクロファージをマウスに移植すると、大腸炎が軽減

もう一方のタイプである炎症誘導型マクロファージは、その集団が減少するだけでなく、炎症を抑制する遺伝子を強く発現するという特徴を持つことも明らかになった。そして、E4BP4の発現を高めたマクロファージを野生型マウスに移植すると、実際に大腸炎が軽減することを実証した。

IBD治療戦略で革新的な展望を開くことに期待

今回の発見は、マクロファージを炎症抑制型にコントロールする新しいメカニズムを示唆するものと言える。

「E4BP4は体内リズムを司るだけでなく、炎症を抑える役割も担うユニークな遺伝子であることが明らかになった。この発見はIBDに対する治療戦略において、革新的な展望を開くことが期待される」と、研究グループは述べている。

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