皮膚炎・口内炎・味覚障害・不妊症など多彩な症状の亜鉛欠乏症
順天堂大学は4月25日、大規模なレセプト情報を基に、亜鉛欠乏症患者の頻度と理学的および臨床的特徴を評価した結果を発表した。この研究は、同大医学部総合診療科学講座の内藤俊夫主任教授、横川博英先任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
亜鉛は人体にとって重要な微量元素であり、骨、筋肉、肝臓、腎臓など全身に分布し生体内の300以上の酵素反応に関与している。そのため、亜鉛不足による症状は実に多彩であり、亜鉛欠乏症の症状として皮膚炎、口内炎、脱毛症、褥瘡(難治性)、食欲低下、発育障害(小児で体重増加不良、低身長)、性腺機能不全、易感染性、味覚障害、貧血、不妊症などが報告されている。しかし、亜鉛欠乏症の頻度や、理学的および臨床的特徴に関する検討は限られている。
血清亜鉛濃度確認の患者1万3,100人を解析、レセプト情報より
研究グループは先行研究により、人間ドック受診者の亜鉛欠乏の実態などを報告してきた。今回の研究では、日本人亜鉛欠乏症患者の理学的および臨床的特徴を明らかにすることを目的に、レセプト情報を基にした大規模データベースを利用して日本人亜鉛欠乏症患者の頻度、理学的および臨床的特徴を評価した。同研究では、2019年1月~2021年12月までにメディカル・データ・ビジョン株式会社が急性期医療機関から収集したデータに登録された、全国の匿名化されたレセプト情報を用いて大規模データベースを構築。その中で、血清亜鉛濃度が確認できた1万5,328人中、適格基準を満たした1万3,100人を解析対象とした。
亜鉛欠乏症の頻度、男性36.6%・女性33.1%で年齢とともに上昇
亜鉛欠乏症患者(<60μg/dL)の頻度は、男性で36.6%、女性で33.1%と高頻度だった。また、亜鉛欠乏症患者の頻度は年齢とともに上昇した。
性別・年齢で調整した多変量解析の結果では、肺炎、褥瘡、サルコペニア、COVID-19、慢性腎臓病などの併存疾患が亜鉛欠乏症の関連要因だった。さらに、利尿剤、抗生剤、抗貧血薬および甲状腺ホルモン治療などの現病歴が、亜鉛欠乏症の関連要因だった。以上の結果から、併存疾患のため治療中の患者において、亜鉛欠乏症の頻度は比較的高く、消耗性疾患の併存は亜鉛欠乏の関連要因であることが示唆された。
併存症治療で血清亜鉛濃度評価などが栄養状態評価とともに重要と示唆
今回、研究グループはこれまで明らかではなかった亜鉛欠乏症の頻度、理学的および臨床的特徴を解析した。多くの併存疾患が低亜鉛血症の関連要因であることから、これらの併存症の治療の際にも血清亜鉛濃度の評価などが栄養状態の評価とともに重要であることが示唆された。今後、本研究の成果を参考にすることで、併存疾患のより適切な治療に貢献できると考える、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・順天堂大学 プレスリリース