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「今」の長さの感覚、集団が大きく受動的であるほど長く感じると判明-筑波大ほか

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2024年05月08日 AM09:30

集団サイズが増加すると、TBWも増加する?

筑波大学は4月26日、集団の中で「今」の長さの感覚が柔軟に変化することを発見したと発表した。この研究は、同大システム情報系の新里高行助教と、長岡技術科学大学技学研究院 情報・経営システム系の西山雄大准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Psychology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

Temporal binding window(時間統合窓:以下、)とは、さまざまな非同期な感覚情報を、一つの「今」というイベントにまとめることができる時間幅を意味する。つまりTBWの範囲内であれば、別々の事柄が「今」同時に起こっていると感じることができる。

TBWについてはこれまで、視覚・聴覚における「マガーク効果」のように、個人の複数の感覚を対象とした研究がたくさん行われてきたが、集団としてのTBWの性質や法則性はまだわかっていない。もし、集団が一つのエージェント(主体)として行為するようなことがあれば、「今」というタイミングは共有されなければならないはずだ。そこで研究グループは今回、「集団サイズが増加するとともにTBWも増加する」という仮説のもとに、実験系を構築した。

参加者が集団内で能動的にバラバラな拍手音を統合し、「今」を形成していることが判明

まず、さまざまな拍手音を収録して、人工的な拍手音を構成し、この拍手音のタイミングを、ある時間範囲T内に、集団の人数Nに応じて一様に分布させる。すると、Tの幅が狭いほど拍手の音は密集し、1つの拍手音として感じられるようになる一方、Tが大きくなると拍手の音はバラバラに聞こえる。実験参加者に対して、このグループの拍手を3回、4Hzのリズムで約1秒間提示した。この時、参加者(男性31人、女性9人、平均年齢22.1才)には聞こえた拍手音が「だいたい揃っているか」をYes/Noで判断してもらった。

また、参加者の集団への関与度に応じた3通りのタスクを設定。最も低い関与度では、参加者に自動に流れてくる拍手音声を聞かせ、同期しているか否かを判断してもらった。中くらいの関与度では、参加者は4Hzのリズムでキーボードを叩き、それと同時に拍手が生成されるようにした。つまり参加者は、自分がキーを押すことで、拍手を能動的に生成したと感じる。最も高い関与度では、自動に流れてくる拍手音に合わせるようにキーを押してもらった。この場合、参加者は常に状況に対して受動的に振る舞うことになる。

実験の結果、集団への関与度に依存せず、拍手の人数が増加するとTBWが対数的に比例して増加した。また、TBWの境界の曖昧さはグループの増加とともには増加せず、一定を保った。これは、集団サイズの増加に伴い刺激が複雑になることで、判断が曖昧になるのではなく、参加者において「1つの時間幅=今」が能動的に構成されていることを意味する。

因果関係が曖昧なときの方が、集団の中で「今」の感覚の長さが増大

さらに、タスクに対して受動的に振る舞うとき(関与度高)は、能動的(関与度中)/完全に何もしない(関与度低)ときに比べ、有意にTBWの増加が観察された。つまり、「自身の行為によって拍手音が鳴る」という因果関係がはっきりしている時よりも、「自他の混在した行為によって拍手音が鳴る」という因果関係が曖昧なときの方が、より集団の中で「今」の感覚の長さが増大していることを意味する。

これは、誰がリーダーかわからないような不確実な文脈を含む集団行動の中で、どのようにお互いの時間が調整されているかを示唆している。

音楽独特のグルーブ感や一体感など、集団現象の解明に期待

今回の研究により、集団のサイズが増加するとTBWも増加することが示され、同時に、集団のサイズとTBWが対数法則に従うとき(Weber-Fechnerの法則)、ジョイントラッシュという集団におけるリズムが加速する現象が説明できることも明らかになった。

「集団が一つのエージェントとして振る舞うとき、個体たちの間の時間感覚は柔軟に調整されていることが示唆された。このことは、音楽独特のグルーブ感や一体感のような、さまざまな集団現象の説明に応用できると考えられる」と、研究グループは述べている。

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