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「わきが」のニオイ物質生成に関わる菌を特定、メタゲノム解析で-大阪公立大ほか

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2024年05月01日 AM09:00

腋臭症のニオイの原因菌を遺伝子レベルで解析

大阪公立大学は4月23日、腋臭症の異なるタイプの臭いを比較し、臭い物質の生成に関わる菌を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科ゲノム免疫学の植松智教授(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターメタゲノム医学分野特任教授を兼任)、藤本康介准教授(東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターメタゲノム医学分野特任准教授を兼任)、植松未帆助教、渡邊美樹医師(研究当時大阪市立大学大学院医学研究科博士課程)、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター健康医療インテリジェンス分野の井元清哉教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Investigative Dermatology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

腋臭症はわきの下から特異な悪臭を放つ状態で、日本人の約10%が腋臭症と言われている。悪臭の原因は腋窩の汗に含まれるアポクリン腺分泌物と言われ、分泌直後は無臭だが、皮膚の常在菌が代謝することで悪臭を伴う代謝物が産生される。腋臭の臭いはそれぞれ特徴があり、約9割の人は、多い順に「ミルク様臭(M型)」「酸様臭(A型)」「カレースパイス様臭(C型)」に分けることができる。

研究グループは、東京大学のスーパーコンピュータSHIROKANEを使用し、体のさまざまな部位に棲息する細菌群(マイクロバイオーム)からDNAを抽出し、それらが持つ遺伝子の情報を全て読み取る研究を行っている。今回、腋臭症のニオイの原因となる菌を遺伝子レベルで解析した。

カレースパイス様の腋臭で悪臭の原因となる代謝物の前駆物質が有意に増加

研究では、健康な成人男性20人を被験者とし、臭気判定士により腋臭症に特徴的な臭いであるカレースパイス様の腋臭をもつ11人(C群)と、最も弱い臭いであるミルク様の腋臭をもつ9人(M群)に分類。腋窩サンプルの網羅的な代謝物解析を行ったところ、C群で腋窩の悪臭の原因となる代謝物の前駆物質が有意に増加していることが判明した。

ブドウ球菌科やコリネバクテリア属細菌が悪臭の原因に関わる可能性

次に腋窩サンプルのメタゲノム解析を行ったところ、ブドウ球菌科(Staphylococcaceae)の細菌がC群で有意に増加していることが判明。さらに、メタゲノムデータを用いて腋窩の悪臭の原因となる代謝物(HMHA, 3M2H, 3M3SH)の代謝に関わる遺伝子を調べたところ、HMHAおよび3M2Hの代謝に関わる遺伝子(agaA)は、C群とM群でともにコリネバクテリア属細菌が有していることが明らかとなった。

一方、3M3SHの前駆物質であるCys-Gly-3M3SHの取り込みに関わる遺伝子(dtpT)およびCys-3M3SHの代謝に関わる遺伝子(patB)について検討したところ、M群と比較してC群でよりStaphylococcus hominisが関与していることが明らかとなった。

ファージ由来の抗菌酵素の人工合成に成功

そこで研究グループは、C群で増加している3M3SHの生成を抑制するために、S. hominisを特異的に減少させることが重要ではないかと考えた。しかし、抗菌薬はS. hominis以外の皮膚常在菌をも殺傷してしまうため、有用ではない。そこで、S. hominisに対する溶菌酵素を、メタゲノムデータを用いて探索した。その結果、計3つの溶菌酵素配列を同定し、そのうちの1つの人工合成に成功した。その溶菌酵素をS. hominisを含む5種類の皮膚常在菌に投与したところ、S. hominisのみ溶菌された。

腋臭症に対する新たな治療技術への貢献に期待

今回の研究で、腋臭症のわきの下のマイクロバイオームの遺伝子を調べた結果、複数の菌が連携して働いて臭い物質を生成していること、とりわけ常在性ブドウ球菌の働きが臭いの発生に重要であることが判明した。

「新しい抗菌剤候補として、この細菌を攻撃するウイルスがもつエンドライシンというタンパク質を同定することができたのも、網羅的な遺伝子解析を行なったためだと言える。本研究が、腋臭症に対する新たな治療技術としての貢献が強く期待される」と、研究グループは述べている。

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