遅延性の嘔吐を経験した小児225人を対象に調査
国立成育医療研究センターは4月23日、日本の小児における食物蛋白誘発胃腸炎(Food Protein-Induced Enterocolitis Syndrome;FPIES(エフパイス))の実態を解明するため、アレルギー専門医が在籍する13施設における多施設横断研究を行い、その結果を発表した。この研究は、筑波メディカルセンター病院小児科の林大輔専門科長(筑波大学医学医療系遺伝医学)、筑波大学医学医療系遺伝医学の野口恵美子教授、国立成育医療研究センター免疫アレルギー・感染研究部の森田英明室長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Allergy and Clinical Immunology in practice」に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
FPIES は、世界的に患者数の増加が近年報告され注目されている。原因食物を食べた後、1~4時間後に嘔吐を繰り返したり、24時間以内に下痢を起こすなどの症状がでる疾患で、典型的なアレルギー症状がないため、食物アレルギーと気づかれないことが多くある。2017年に公表された国際的な診断基準によって、多くのFPIESの診断や管理に関する論文が発表され、疾患の臨床的特徴の解明が急速に進んでいる。FPIES患者は乳児に限らず、成人でも報告されていて、原因となる食物も牛乳や大豆だけではなく、鶏卵、米、オーツ麦、ピーナッツ、海産物など多岐にわたる。さらに、原因食物の種類や頻度は居住地域や生活様式によって異なることも報告されている。
日本におけるFPIESの研究は、新生児期に発症する牛乳を原因とするもの、特定食物について検討したものが多く、対象人数が多い多抗原の臨床的特徴をまとめた報告はない。そのため、日本の小児におけるFPIES患者の臨床的特徴を明らかにし、正確な診断につなげる研究が求められていた。
そこで今回研究グループは、食後1~4時間以内に遅延性の嘔吐を経験した0~15歳の小児225人を対象に、カルテデータを基に、原因食物や症状の聴取、国際的な診断基準との適合性、血液検査による特異的IgE抗体の抗体値などを調べた。
発症月齢中央値は鶏卵7.0か月、魚や貝は発症が遅い傾向
解析の結果、FPIESの原因食物として、日本の小児では鶏卵(141人:58.0%)が最も多く、大豆(27人:11.1%)、小麦(27人:11.1%)、魚(16人:6.6%)、牛乳(15人:6.2%)、貝(9人:3.7%)と続いていた。また、発症月齢の中央値は、鶏卵7.0か月、大豆6.0か月、小麦8.0か月だったが、牛乳は1.0か月と他の食物と比較して早く発症していた。一方、魚は36.0か月、貝は48.0か月と発症が遅い傾向にあった。
国際的な診断基準では、一部の軽症患者が適切に診断されていない可能性
解析対象225 人のうち、140 人が国際的な診断基準を完全に満たしていた。一方、79人は部分的にしか満たさなかったものの、症状が2回以上引き起こされていた。これは、国際的な診断基準では、軽症〜中等症のFPIESを適切には診断できない可能性を示唆している。完全に基準を満たした患者群では、血の気が引き、青ざめる(蒼白)、倦怠感、下痢の頻度が有意に高くなっていた。
「日本の小児におけるFPIESの臨床的特徴が明らかになったことで、今後、日本でのFPIESの正確な診断につながるとともに、FPIES研究の基本資料になると期待される。また、現在の国際的な診断基準では、一部の軽症患者がFPIESと診断されない可能性があるため、さらなる検討が必要である」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・国立成育医療研究センター プレスリリース