既存の生体活性ガラス、骨欠損部で炎症を引き起こす問題
東北大学は4月22日、既存の生体活性ガラスと比較して吸収性が高く、かつ亜鉛イオンやフッ化物イオンなどさまざまなイオンを放出する生体活性ガラスを開発し、同ガラスが高い骨再生作用および抗炎症効果を示すことを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科の近藤威助教、江草宏教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Dental Research」オンライン版に掲載されている。
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歯科や整形外科分野では、重度の歯周病や骨折、腫瘍の摘出によって生じた骨欠損部に対して、さまざまな骨補填材を用いた骨再生治療が行われている。しかし、現在使われている骨補填材には高い生体活性作用はなく、大規模な骨欠損の治療は困難だった。近年、生体内で吸収しながらさまざまなイオンを放出する生体活性ガラスが医療分野において注目を集めており、放出されるイオンが高い生体活性作用を示すことから、骨再生への応用が期待されている。これまでの研究では生体活性ガラスは骨欠損部において骨再生促進作用を示す一方で、長期間残存し、さらには炎症を惹起したため、骨補填材としての臨床応用には課題があった。
亜鉛イオンやフッ化物イオンを放出する仕組みを付与したMPガラス、マウスで作用を確認
研究グループは今回、既存の生体活性ガラスと比較して吸収性の高いリン酸塩系ガラスに、強力な骨再生作用および抗炎症効果を示す亜鉛イオンやフッ化物イオンなどさまざまなイオンを放出する仕組みを付与した新たな生体活性ガラス(Multicomponent phosphate (MP)ガラス)を開発した。
試験管内の検証では、MPガラスが既存の生体活性ガラスよりも吸収性が高く、高い石灰化促進作用、抗炎症作用、抗菌作用を示した。また、マウスの骨欠損部では炎症を惹起せず、強力な骨再生作用を示した。
研究グループは、「今後、MPガラスを用いることで、既存の骨補填材よりも高い生体活性作用を示す骨補填材としての実用化を目指し、大規模骨欠損の治療を可能にする新たな骨再生療法の開発につなげたい」と、述べている。
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