医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > 日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか

日本人がアフターコロナでもマスク着用を続けるのは「自分がしたいから」-阪大ほか

読了時間:約 2分17秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2024年04月25日 AM09:30

マスク着用率の推移と社会的規範の影響について分析

大阪大学は4月18日、日本人のマスク着用率の推移とそれに対する社会的規範(政府による推奨政策および、周囲の着用状況)の影響を調査した結果、マスク着用の動機は、「政府が推奨している」という命令的規範の遵守や周囲からの強い同調圧力というよりも、「私がしたいから」という個人の判断によるものが大きいことがわかったと発表した。この研究は、同大大学院人間科学研究科/同大感染症総合教育研究拠点の三浦麻子教授、立命館大学総合心理学部の村山綾准教授(研究当時:近畿大学国際学部准教授)、東洋大学社会学部の北村英哉教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Japanese Psychological Research」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

人間の行動、そしてそれを司っている心理は、置かれている状況の強い影響を受けている。平時はこうした状況の力が意識されることはあまりないが、コロナ・パンデミックのように激烈な状況の変化があると、多くの人は否が応でもそれを自覚させられたものと推察される。研究グループは、政治経済などの社会状況の変化とそれに伴う人の心の変化を探るために、2022年10月以来、2,000人の日本在住者を対象にしたWeb調査を1か月に1回実施してきた。日本人の「マスク好き」の背景を探る心理学研究はコロナ禍以前からあるが、今回の研究では、同調査の2023年2月~10月の回答から、日本人のマスク着用率の推移とそれに対する社会的規範の影響について分析した。2023年3月はマスク着用が個人の判断となったタイミングで、2023年5月は新型コロナが5類に引き下げられたタイミングであり、「アフターコロナ」を決定づける時期にあたる。

マスク着用率、政府による着用ルールや行動制限の緩和後も急減せず

研究グループは、回答者自身のマスク着用率を問う項目「あなたは、現在、外出時にマスクを着用していますか」に注目した。マスク着用に「政府が推奨している」という命令的規範が及ぼす影響を知るために、システム正当化傾向との関連を検討した。もし命令的規範が着用を促していたなら、マスク着用を政府が推奨していた当時は、システムを正当化する傾向が強いほどマスクを着用しようとすると考えられた。

しかし、分析の結果、マスク着用率は、政府による着用ルールや行動制限全体の緩和後も急減しておらず、そうした傾向は認められなかった。つまり、コロナ禍におけるマスク着用は、少なくともその終期においては、命令に従おうとする心理によって説明できるものではなかったということになる。

「周囲が着用」は着用率を高める方向に作用していたが、同調圧力というほどは強くなかった

また、マスク着用に「周囲が着用している」という記述的規範が及ぼす影響を知るために、社会全体のマスク着用率を推定させる項目「現在の、日本の社会全体のマスク着用率はどの程度だと思いますか」への回答との関連も分析した。その結果、記述的規範から個人の行動への影響は、統計的に意味のあるものではあったが、逆の(回答者自身のマスク着用率が社会全体のマスク着用率の推定に及ぼす)影響と比較すると相対的には小さいものだった。これは、いわゆる「同調圧力」は声高に言われたほどのものではなかったことを示している。これらの結果から、マスク着用は「私がしたいから」という個人の判断によるものだと考えられた。

「研究成果は、長期にわたるパネル調査データを用いることで、パンデミック終期の日本における社会的規範とマスク着用との複雑な関係を明らかにし、状況の力の一端を示すものである」と、研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 血液中アンフィレグリンが心房細動の機能的バイオマーカーとなる可能性-神戸大ほか
  • 腎臓の過剰ろ過、加齢を考慮して判断する新たな数式を定義-大阪公立大
  • 超希少難治性疾患のHGPS、核膜修復の遅延をロナファルニブが改善-科学大ほか
  • 運動後の起立性低血圧、水分摂取で軽減の可能性-杏林大
  • ALS、オリゴデンドロサイト異常がマウスの運動障害を惹起-名大