妊娠は女性の老化を早める?
妊娠は女性の体を明らかに変化させるだけでなく、老化を早める可能性もあることが、新たな研究で示唆された。妊娠経験のある女性は、妊娠経験のない女性よりも生物学的な年齢が高いことが遺伝子分析によって明らかになった。このような生物学的年齢の加速は、妊娠回数が多い女性ほど進んでいたという。米コロンビア大学エイジング・センターのCalen Ryan氏らによるこの研究結果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に4月8日掲載された。
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Ryan氏は、「われわれの研究結果は、妊娠が生物学的老化を早めること、また、その影響は若くて多産な女性において顕著であることを示唆している」と同大学のニュースリリースの中で述べている。同氏はまた、「この研究は、同じ女性を長期にわたって追跡し、それぞれの女性の妊娠回数の変化を生物学的年齢の変化に結び付けた初めてのものである」とも語っている。
先行研究では、女性の妊孕性の高さは高齢期の健康と長寿に悪影響を及ぼし得ることが報告されている。しかし、妊娠が加齢による衰えが現れ始める前の段階の健康に影響を及ぼすのかについては明らかになっていない。そこでRyan氏らは今回、Cebu Longitudinal Health and Nutrition Survey(セブ縦断的健康栄養調査)参加者1,735人(20〜22歳、女性825人、男性910人)の試験開始時(2005年)と追跡時(2009〜2014年)の調査データを用いて、妊娠回数と生物学的年齢の関連を検討した。生物学的年齢は、参加者から採取された血液サンプルを用いて調べたDNAメチル化の情報を基に、Horvathクロックなどの6種類のエピジェネティック時計を用いて推定した。
社会的・経済的地位、喫煙、遺伝などの老化を加速させる要因を考慮して解析した結果、いずれのエピジェネティック時計を用いた場合でも、1回以上の妊娠歴がある女性では、妊娠歴がない女性に比べて生物学的年齢の高いことが明らかになった。また、妊娠回数の多い女性の生物学的年齢の方が、妊娠歴がないか妊娠回数の少ない女性よりも高いことも示された。一方、男性では、パートナーの妊娠回数による生物学的年齢の加速は認められなかった。
こうした結果を受けて研究グループは、「この結果は、妊娠や授乳に特有の何かが生物学的な老化を加速させる可能性のあることを示唆している」との見方を示している。Ryan氏は、若年齢での妊娠は、発育途上にある女性の体に大きな負担をかけると指摘する。同氏は、「試験開始時に報告された妊娠の多くは、女性がまだ成長途上にある思春期後期に起こったものだった。その年代での妊娠は、成長期の母親にとって大きな負担になることが予想される。とりわけ、医療や資源、その他の支援へのアクセスが限られている場合には、その傾向が顕著だ」と話す。
Ryan氏は、「今後の研究では、なぜ妊娠が老化を加速させるのか、そしてそれが高齢期の女性の健康に影響を与えるのかについて、より詳しく調べる必要がある」と話している。
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・Pregnancy is linked to faster epigenetic aging in young women
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