医療ビッグデータを用いて、CDK4/6阻害薬と顎骨壊死の関連性を調査
岐阜薬科大学は4月18日、医療ビッグデータを用いてCDK4/6阻害薬と顎骨壊死の関連について、明らかにしたと発表した。この研究は、郷真貴子氏(大垣市民病院 薬剤師)、野口義紘准教授(同大病院薬学研究室・医療連携薬学研究室)、増田陸人氏(同大病院薬学研究室 学部生)、浅野裕紀氏(大垣市民病院 薬剤師)、木村美智男調剤科長(大垣市民病院)、宇佐美英績特任教授(同大医療連携薬学研究室 特任教授、大垣市民病院 薬剤部長)、吉村知哲教授(同大病院薬学研究室・医療連携薬学研究室)らの研究グループによるもの。研究成果は、「International Journal of Cancer」に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
CDK4/6阻害薬に関連する最も一般的な毒性に、骨髄における白血球および好中球前駆体のCDK6の阻害による白血球減少および好中球減少がある。これらの血液毒性は、CDK6よりもCDK4に対する選択性が約13倍高いアベマシクリブと比較し、パルボシクリブで、より一般的に観察される。アベマシクリブにおいては骨髄抑制の頻度が低い一方で、下痢などの副作用発症率が高い。
このように、パルボシクリブとアベマシクリブは、CDKの選択性の違いにより発症する副作用が異なることが知られているが、これらの違い全てが明らかにされているわけではない。そこで研究グループは今回、市販後サーベイランスに用いられる米国FDAの自発報告システムFAERSのデータを用いて、CDK4/6阻害薬と顎骨壊死の関連について調査した。
アベマシクリブでは口内炎関連、パルボシクリブでは感染症や顎骨壊死のシグナルを検出
CDK4/6阻害薬のうち、アベマシクリブについては口内炎関連の有害事象を検出し、パルボシクリブについては口腔内軟部組織損傷や感染症などのシグナルを検出した。また、顎骨壊死のシグナルが検出されたCDK4/6阻害薬はパルボシクリブだけであり、ビスホスホネート製剤とデノスマブの併用を共変量として調整した後でもシグナルが検出された(調整報告オッズ比95%信頼区間下限値: 6.09)。
口腔粘膜上皮バリアが破壊されて顎の感染症が起こり、顎骨壊死を引き起こす可能性
口腔内には数千種類の細菌が存在し、粘膜免疫系はさまざまな微生物から身を守り、口腔免疫恒常性を維持しているが、自然免疫の機能不全と相まって細菌叢のバランスが崩れると、複数の粘膜疾患を引き起こす可能性がある。
腸管粘膜バリアとは異なり、口腔粘膜バリアは歯肉接合部の特殊な構造により脆弱であるため、口腔粘膜上皮バリアの完全性が破壊されると顎の感染症につながり、それによって細菌の侵入やコロニー形成が促進される。このような口腔内の粘膜潰瘍は、顎骨壊死における最初の病理学的事象と考えられている。
パルボシクリブと歯・口腔軟部組織感染症や顎骨壊死が関連することを示唆
パルボシクリブによる骨髄抑制の発症率は、アベマシクリブより高いことから、パルボシクリブ関連顎骨壊死は、パルボシクリブの骨髄抑制による免疫抑制が口腔内細菌叢のバランスを崩すことが原因の可能性がある。
以上のことから、同研究で検出されたパルボシクリブのシグナルは、口腔軟部組織障害や感染症との関連、歯・口腔軟部組織感染症や顎骨壊死との関連を示唆していると、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・岐阜薬科大学 プレスリリース