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難治性骨折の治癒促進するプラズマ照射法を開発、損傷部強度3.5倍に-大阪公立大

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2024年04月23日 AM09:10

寝たきりにもつながる骨折治癒の遅れ、骨癒合までの日数短縮できる治療法が求められる

大阪公立大学は4月17日、骨折した骨が癒合する(骨がくっつく)までの期間を短縮できる治療法としてプラズマ照射に注目し、難治性骨折ラットモデルでプラズマ照射による治癒促進の確認を行ったと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科整形外科学の斉藤公亮大学院生(博士課程3年)、豊田宏光准教授、中村博亮教授、大学院工学研究科医工・生命工学教育研究センターの呉準席教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

骨折は、手術を行っても、元の状態に回復するまでに一定期間が必要である。骨折した部位の安静を保つことで骨癒合が得られるが、通常の経過と比べて骨折の治癒が遅れたり()、長期間安静にしても骨癒合が得られない状態()になったりする場合がある。動かせない期間が長くなると大きな後遺症を引き起こしかねず、高齢の場合は寝たきりの原因にもなる。この問題を克服するために多くの手術方法が開発されてきたが、骨折の治癒を促進し、骨癒合までの日数を短縮できる治療法の開発は難しく、いまだニーズが高い重要な課題となっている。

室温での照射が可能となったプラズマ医療、難治性骨折モデルで治療効果を検討

そこで研究グループは、低温大気圧プラズマ技術に注目した。プラズマとは、活性粒子(電子、イオン、ラジカル、光)の集合体で、気体に高温加熱や電気的衝撃などの高エネルギーを加え、分子の解離や原子の電離を生じさせることで発生する。近年、室温環境下での照射が可能となったため、生体へ直接照射するプラズマ医療が注目されている。皮膚の潰瘍や感染に対して、治癒促進効果が発揮されることが報告されており、組織の再生への期待が高まっている。研究グループはこの技術を骨折治療に応用できないかと考え、ウサギの前足にある尺骨という骨を大きく切除したモデルに対する低温大気圧プラズマ照射により、新たな骨が再生することを以前に発表していた。今回は、整形外科診療でも特に治療が難しい、難治性骨折モデルを作製し、低温大気圧プラズマ照射による骨折治療効果が認められるのか検討した。

ラットモデルにペンシルタイプ装置で照射、術後8週で骨の連続性・骨折部強化を確認

研究グループは、生体に直接照射が行え、持ち運び可能なペンシルタイプの低温大気圧プラズマ照射装置を開発した。ラットの大腿骨に難治性骨折モデル(骨癒合がかなり困難な骨折モデル)を作製して損傷部位にプラズマ照射を行うことにより、骨折部の治癒効果がどのように変化するのか調べた。5分間プラズマを照射した群(プラズマ群)と、ヘリウムガスのみを照射した群(コントロール群)を作成し、単純X線(レントゲン)やCT画像における変化や、組織学的、力学強度的な違いを比較した。

その結果、術後8週の単純X線やCT検査により、対照群は骨癒合していないのに対して、プラズマ群では骨の連続性を確認できた。さらに組織検査では、プラズマ群では術後4週で骨折部に軟骨の形成がみられ、軟骨内骨化という骨癒合で必要なプロセスに進んでいることがわかった。術後8週で行った大腿骨の3点曲げ試験では、骨折部の強度がプラズマ群で約3.5倍になっていることもわかった。

マウス前骨芽細胞株に5~15秒照射で、骨細胞分化指標ALPタンパク質の活性が上昇

次に、細胞への影響を調査するためにマウスの前骨芽細胞株(骨芽細胞に類似した性質のある細胞)をシャーレで培養し、プラズマを照射する実験を行った。その結果、5~15秒間の照射で、ALPという骨芽細胞が骨細胞へ分化していく際の指標となるタンパク質の活性が上昇していることがわかった。このことはプラズマ照射により骨芽細胞の成熟が進んだ(分化した)ことを意味する。以上から、プラズマ照射は軟骨内骨化を足がかりにした骨癒合の促進や、骨芽細胞の骨分化を促進するなどの効果を発揮する可能性が示唆された。

現在の骨折治療との組み合わせで、難治性骨折の画期的治療法につながると期待

現在行われている骨折治療に、今回の動物実験で示された低温大気圧プラズマによる骨折治癒促進効果を組み合わせることができれば、難治性骨折の治癒を大いに促進させる画期的な治療法になるのではないかと期待される。「今後はより大型の動物や、最終的にはヒトにおいて難治性骨折に効果があること、また、通常骨折であっても骨癒合までの日数短縮への貢献可能性について、研究を進めたいと考えている」と、研究グループは述べている。

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