海外で実施中の胎児脊髄髄膜瘤手術、日本では技術・管理面で実施が難しかった
大阪大学は4月15日、妊娠中に脊髄髄膜瘤と診断された胎児に対して先進的な胎児手術(母体開腹・子宮開放胎児脊髄髄膜瘤閉鎖術)を行い成功したと発表した。この研究は、同大医学系研究科の遠藤誠之教授らを中心とする大阪大学医学部附属病院胎児診断治療センター、国立成育医療研究センター胎児診療科の共同研究グループによるものだ。
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胎児脊髄髄膜瘤に対して、神経障害が軽度な妊娠中に治療をする「胎児脊髄髄膜瘤閉鎖術」が米国で開発された。現在、海外の主要な胎児治療実施施設では標準治療の一つの選択肢として実施されている。しかし、日本では、妊娠早期での診断率が高くないこと、母体に対して最小限の侵襲で行う事を目標にしていること、高度な周術期管理を要し、かつ技術的に難しいことなどから、これまで実施されていなかった。
24年4月までに計6件手術実施、下肢運動機能改善・生涯にわたる神経障害軽減など
今回、遠藤教授らの胎児診断治療センターでは、AMED日本医療研究開発機構難治性疾患実用化研究事業からの研究資金提供を受けて、妊娠26週未満で診断された脊髄髄膜瘤の胎児に対して母体開腹・子宮開放胎児髄膜瘤閉鎖術を実施した。これにより、当該患者はキアリII型奇形が改善し、下肢運動機能が改善し、生涯にわたる神経障害を軽減することができた。また、脳室腹腔シャントを必要とする患者の割合が減少した。なお、2021年4月に日本で初の手術を行い、2024年4月までに計6件の手術を行っている。
現在の標準治療と比べて、胎児手術では下肢機能・水頭症の改善に期待
今回の治療成果は、胎児期における脊髄髄膜瘤治療の新たな道筋となり、生後のQOLの向上に寄与するとともに、同様の診断を受けた他の胎児・家族への希望となることが期待される。同時に、諸外国と比較して改善の余地がある日本の胎児診断率について、胎児手術が治療選択肢になることで、その胎児診断率が改善することにつながると考えられるという。また、現在、日本での標準治療として行われている新生児期の髄膜瘤閉鎖術に比べて、胎児手術では胎児の下肢機能や水頭症の改善が期待される、と研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU