ハイリスク症例の心臓手術適応が近年拡大、プレフレイルによる影響は検討不十分
兵庫県立大学は4月15日、待機心臓手術を施行した65歳以上の高齢者のうち、術前にフレイル評価を行った患者において、フレイルおよびプレフレイル(フレイルの前段階)が、心臓手術後のリハビリ経過を遅らせ自宅への退院を減少させること、術後3年間の死亡や合併症を増加させることを明らかにした発表した。この研究は、兵庫県立はりま姫路総合医療センターの本多祐氏、同大先端医療工学研究所の八木直美准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Surgery Today」に掲載されている。
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日本ではフレイルを有する高齢者が年々増加しており、2020年のフレイル有病率は8.7%と報告されている。近年、手術手技やデバイスの改良および周術期管理の進歩により,以前には対象とならなかった高齢者のハイリスク症例に対する心臓手術の適応が拡大している。2010年代に入り、フレイルは心臓手術の術前リスク評価における重要な予後予測因子として注目され、さらに主要脳心血管イベント(major adverse cardiac and cerebrovascular events:MACCE)との間に強い正の相関を認めたと報告されている。しかし、フレイルと比較して、プレフレイルが心臓手術後のリハビリ経過や中期予後に及ぼす影響を調査した研究報告は少なく、十分に検討されていないのが現状で、プレフレイルについてほとんど知見がなかった。
フレイル、プレフレイルは中期生存率やMACCEなどと強く関連
待機心臓手術を受けた261人(年齢中央値:73歳、女性30%)の患者を対象にデータ分析した。日本版フレイル基準により、フレイル群86人、プレフレイル群131人、健常群44人に分類し、手術後のリハビリ経過や中期予後との関連を解析した。その結果、歩行能力の回復、退院時の転帰、中期の生存率およびMACCEと強く関連していることがわかった。海外の研究結果から術前のリハビリテーションが心臓手術後のリハビリ経過や中期予後を改善すると報告されているが、国内ではまだ実施されていない。
術前リハビリを導入した前向き介入研究を計画中
今回、フレイルとプレフレイルが心臓手術後のリハビリ経過や中期予後に及ぼす影響を解明した。次の段階として、術前リハビリテーションの実施が有用であるか解明することが必要だ。「現在、術前リハビリテーションは保険適応外であるが、フレイルが心臓手術にもたらす影響について国内のエビデンスを蓄積することを目的として、2024年度から7年間の術前リハビリを導入した前向き介入研究を計画している」と、研究グループは述べている。
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