配偶者のCVD発症とパートナーのうつ病の関連性は不明だった
京都大学は4月15日、家族間での心血管疾患(CVD)とうつ病の関連を明らかにしたと発表した。この研究は、ボストン大学公衆衛生大学院の古村俊昌修士課程学生、京都大学大学院医学系研究科の井上浩輔准教授、近藤尚己教授(社会疫学)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の津川友介准教授(医療政策学)らの研究グループによるもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
日本におけるうつ病の発症者数は増加傾向にあり、うつ病患者の数は100万人以上に上ると報告されている。うつ病は健康や幸福度および労働の生産性に大きな影響を与えていることから、その規定因子を明らかにすることは喫緊の課題だ。
過去の研究では、個人レベルではCVDとうつ病にさまざまなつながりがあることが多く報告されていた。その一方で、配偶者のCVDがパートナーのメンタルヘルスへ与える影響に関するエビデンスは限られている。そこで研究グループは今回、配偶者のCVD発症と、そのパートナーのうつ病の関連性を明らかにすることを目的とした。
CVDを発症した夫婦では、世帯主がうつ病を発症するリスク13%「高」
研究グループは、日本における最大の保険者である全国健康保険協会のデータを用いて、27万7,142組の20歳以上の夫婦のペア(平均年齢58.15)を作成した。
2016~2021年度における最大6年間の追跡の結果、配偶者(被扶養者)がCVD(脳卒中、心不全、心筋梗塞)を発症した夫婦では、配偶者がCVDを発症していない場合と比較し、世帯主(被保険者)がうつ病を発症するリスクが13%高いことがわかった(調整ハザード比[95%信頼区間]=1.13 [1.07-1.20])。この関連は性別や年齢などの属性による違いは認められず、配偶者の発症したCVDが入院を要するような重症なケースでは、より強い関連が認められた(調整ハザード比[95%信頼区間]=1.23 [1.10-1.38])。
患者本人に加えて「患者家族」を意識したケアの提供が重要な視点となる可能性
日々の習慣から社会的な要因まで、健康を規定する因子はさまざまな規模で存在している。その中で、家族とは生活に直接関わる身近な存在でありながら、実際どのように健康に影響を与えているのかのエビデンスは多くない。
今回の研究により、CVD患者の家族に対する包括的なメンタルケアを提供することが、うつ病の発症の予防につながる可能性が示唆された。予防医療が注目を浴びる近年において、患者本人に加えて患者の家族を意識したケアを提供することは、重要な視点となる可能性がある。
「世帯全体を対象とした研究は世界的に見ても限られているため、より効果的な施策の開発につながる知見の創出に注力していきたい」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・京都大学 最新の研究成果を知る