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「リウマチ・潰瘍性大腸炎」治療薬の薬疹リスクアレルを発見-理研ほか

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2024年04月17日 AM09:20

サルファ剤による薬疹にHLA-A*11:01が関係することはわかっていたが詳細は不明

(理研)は4月12日、・潰瘍性大腸炎治療薬サラゾスルファピリジンの副作用である薬疹の発症に、特定のHLAアレルである「-A*11:01」「-B*39:01」「-B*56:03」がそれぞれ独立して関連することを発見したと発表した。この研究は、理研生命医科学研究センター ファーマコゲノミクス研究チームの莚田泰誠チームリーダー、福永航也研究員(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部 協力研究員)、国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部の斎藤嘉朗部長(研究当時、現 同研究所副所長)、新潟大学大学院 医歯学総合研究科の阿部理一郎教授らの共同研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

サラゾスルファピリジンは、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎やクローン病の治療薬として広く使われているが、副作用として一定の確率で薬疹が起こることが問題となっている。重症薬疹であるスティーヴンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死融解症(TEN)、(DIHS)に加え、軽症薬疹である播種状紅斑丘疹型薬疹(MPE)など多様なタイプの薬疹が存在し、症状や治療方法もさまざまだ。いずれの薬疹も重篤化した場合、後遺症または死亡につながる可能性がある。

研究グループはこれまでに、サラゾスルファピリジンを含むサルファ剤による薬疹にはHLA-A遺伝子のアレルの一つであるHLA-A*11:01が関係することを見出し、このアレルを持つ日本人の患者は、同アレルを持たない患者に比べて薬疹が9.8倍起こりやすいことを報告していた。しかし、このアレルだけでは全ての患者の薬疹発症を予測することができなかった。また、サルファ剤に共通の化学構造(スルホンアミド基)ではなく、サラゾスルファピリジンに特有の化学構造のみが原因の薬疹に関連する遺伝要因も不明だった。

そこで研究グループは今回、薬物治療開始前に薬疹の発症リスクを予測するバイオマーカーを同定するため、サラゾスルファピリジンによる薬疹患者のHLAアレルを対象に、詳細なゲノム解析を行った。

HLAアレルを一つでも保有している薬疹患者の割合は73%

研究では、サラゾスルファピリジンによる薬疹患者15人のHLA-A、HLA-B、HLA-CおよびHLA-DRB1遺伝子のHLAアレルを調べ、日本人集団2,823人のデータと比較した。

対象とした薬疹患者のうち10人(67%)がHLA-A*11:01、6人(40%)がHLA-B*39:01、3人(20%)がHLA-B*56:03を保有しており、一般的な日本人集団における頻度より有意に高いことがわかった。薬疹患者の中にはHLA-A*11:01やHLA-B*39:01など複数のアレルを1人で保有している患者もいることがわかった。これらのHLAアレルのいずれか一つでも保有している薬疹患者の割合は73%であり、日本人集団における保有率22%と比較して統計的に有意に高頻度でした。また、薬疹の種類別に解析したところ、DIHS患者(10人)のHLA-A*11:01(P値2.7×10-4、オッズ比=11.5)およびHLA-B*39:01(P値=1.2×10-5、オッズ比=22.2)の関連は特に強いことが明らかになった。

、HLA-B*56:03の薬疹とHLA-B*39:01の薬疹メカニズムに相違

HLA分子と薬物分子のドッキング・シミュレーションにより、特定のタイプのHLAに対する薬物の結合親和性を予測できる。サラゾスルファピリジン自体が体内に取り込まれる割合は少なく、腸管内で分解されてから吸収される。そこで、サラゾスルファピリジンと、その代謝物であるスルファピリジン、スルファピリジン・ヒドロキシルアミン体、5-アミノサリチル酸のHLA-A*11:01、HLA-B*39:01、HLA-B*56:03との相互作用をそれぞれ解析したところ、いずれのHLA分子においてもサラゾスルファピリジンの結合自由エネルギーが最も低く、結合親和性が高いことを推定した。これはサラゾスルファピリジンの化学構造が薬疹を引き起こす原因である可能性を示唆している。

さらに、それぞれのHLA分子において、サラゾスルファピリジンが結合する確率が最も高い抗原提示部位をシミュレーションした。

その結果、HLA-A*11:01とHLA-B*56:03では抗原提示部位のポケットA周辺に、HLA-B*39:01ではポケットF周辺にそれぞれ結合する可能性を明らかにした。これは、HLA-A*11:01とHLA-B*56:03が引き起こす薬疹とHLA-B*39:01が引き起こす薬疹のメカニズムが異なっていることを示唆している。

治療開始前の薬疹発症リスク予測で、副作用の回避が可能に

今回の研究結果から、HLA-A*11:01、HLA-B*39:01およびHLA-B*56:03のいずれかを保有する人は、保有しない人に比べてサラゾスルファピリジンによる薬疹を発症するリスクが高いことが示された。薬疹発症患者における保有率から考えると、この3つのHLAアレルをバイオマーカーとして用いることで、サラゾスルファピリジンによる薬疹患者の約4分の3を説明できることになる。

「これらを組み合わせた遺伝子検査により、サラゾスルファピリジン治療開始前の薬疹発症リスクを予測し、治療薬の種類を替えることで副作用の回避が期待される」と、研究グループは述べている。

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