アミロイドβ42/リン酸化タウと脳内病理の本当の関係は?127例で検討
東京都健康長寿医療センターは4月15日、脳脊髄液アルツハイマー病バイオマーカー検査を行い、その後同病院で病理解剖を行った127 例を対象に、バイオマーカーと脳内病理所見の関係について調査し、その結果を発表した。この研究は、同病院脳神経内科の栗原正典氏、同研究所神経病理学(高齢者ブレインバンク)の松原知康氏、齊藤祐子氏らの研究グループによるもの。研究成果は「Acta Neuropathologica Communications」に掲載されている。
アルツハイマー病は認知症の原因として最多で、脳内にアミロイドβ、その後タウタンパク質の異常な蓄積を認め、物忘れなど認知機能低下を認めていく疾患である。近年はレカネマブなどのアミロイド βに対する治療薬の登場により、認知症の前段階の軽度認知障害期からの早期診断が重要となっている。
アルツハイマー病の診断にはアミロイドβ42、リン酸化タウなどの脳脊髄液バイオマーカーが有用なことが知られ、それぞれ脳内のアミロイド β・タウの異常な蓄積と関連すると考えられてきた。一方、脳脊髄液中のアミロイドβ42は他の疾患でも低下することがあることや、リン酸化タウの増加は脳内のタウ蓄積よりもかなり早期に生じる可能性が近年注目されている。しかし、アミロイド β・タウなどの脳内病理との関連を直接みた研究は不十分だった。脳内のアミロイドβ蓄積は認知機能が正常な高齢者でも頻繁に認める一方でタウ蓄積の広がりは症状と関連することから、これらのバイオマーカーと脳内病理の関係は臨床現場でアルツハイマー病と症状の関連を検討するにあたり重要な課題だった。そこで今回研究グループは、脳脊髄液アルツハイマー病バイオマーカー検査を過去に行い、その後同院で病理解剖を行った127例を対象に検討した。
タウ蓄積が広がっていないのにリン酸化タウが軽度増加の症例などを発見
その結果、タウの蓄積が広がっていない症例の中でも脳内のアミロイドβ病理の強さとともに脳脊髄液中のリン酸化タウが軽度増加していることが明らかになった。一方、脳内にアミロイド β 病理を認める症例の中でもタウの蓄積が広がると脳脊髄液中のリン酸化タウはさらに増加していることもわかった。さらに、脳脊髄液中のアミロイドβ42は脳内のアミロイドβ病理の強さとともに減少しているものの、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症など一部の疾患では脳内アミロイドβ病理がないにも関わらずアミロイドβ42が減少することがあることも判明した。
「これらの結果から脳脊髄液アルツハイマー病バイオマーカーを測定した患者の脳内で起きている病気の状態(病理学的変化)を、臨床現場においてより高精度に予測できることが期待される」と、研究グループは述べている。
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・東京都健康長寿医療センター プレスリリース