若い頃の不安定な勤務形態が中年期の健康悪化に関係か
不安定な勤務形態で働いていた若い頃の経験は、中年期の健康に影響を及ぼす可能性のあることが、米ニューヨーク大学教授のWen-Jui Han氏の研究で示された。若い頃に午前9時から午後5時までの標準的な勤務時間ではない、変動的な勤務時間で働いていた人では、50歳の時点で睡眠の質の低下や抑うつ症状が現れている人の多いことが明らかになったという。この研究の詳細は、「PLOS ONE」に4月3日掲載された。Han氏は、「人並みの生活を維持するための資源をもたらすはずの労働が、健康的な生活に脆弱性をもたらしている」と話す。
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Han氏は今回の研究で、調査参加者が22歳のときから30年以上にわたって健康状態を追跡調査したNLSY79(National Longitudinal Survey of Youth-1979)のデータを用いて、7,336人のデータを分析した。その結果、22歳から49歳にかけての勤務形態として、1)ほとんど働いていない(10%)、2)20代は標準的な勤務時間だったが、30代に入ると不安定な雇用形態に規定された変動的な勤務時間(夕方勤務や夜間勤務のような標準的ではない勤務時間やシフト勤務のような不規則な勤務時間など、勤務時間の定まらない不安定な勤務形態)での労働が主となった(17%)、3)20代は標準的な勤務時間だったが、30代に入ると不規則な勤務時間での労働が主となった(12%)、4)ほとんどは標準的な勤務時間だったが、たまに変動的な勤務時間での労働があった(35%)、5)常に標準的な勤務時間で働いていた(26%)の5パターンに分類されることが明らかになった。
Han氏は、「われわれが調べた勤務形態の約4分の3は、対象となった就労期間を通じて、厳密には“安定した日中の時間帯の労働”には該当しない働き方をしていた」と説明し、「このような不安定な勤務形態は、睡眠の質の低下や心身の疲労と関連しており、これらは全て健康不良の原因となり得る」と話す。
さらにこの研究では、20代は標準的な勤務時間だったが30代に入ると変動的で不規則な勤務時間での労働が主となった人では、50歳の時点で1日当たりの睡眠時間が最も短く、睡眠の質が最も低く、身体的および精神的な機能が最も低下しており、健康不良や抑うつ症状を報告する可能性が最も高いことが示された。
Han氏は、「これらの結果は、勤務形態が健康に与えるプラスの影響とマイナスの影響が生涯にわたって蓄積される可能性があることを示している」と言う。同氏は、不安定な勤務形態は、多くの人が不安定な雇用の機会しか得られない状況によってもたらされていると指摘。特に、米国の黒人は、健康状態の悪化につながりやすい不安定な勤務形態の仕事に就いている場合が多いことにも言及している。
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