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働き世代では「血圧高め」の段階から脳・心血管疾患リスク増に-横浜市大ほか

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2024年04月15日 AM09:00

最新GL血圧分類と脳・心血管疾患発症との関係を調査

横浜市立大学は4月11日、企業等10数社による多施設共同研究()に参加した高血圧の治療中ではない労働者8万1,876人を最大9年間追跡調査し、「少し高い血圧」(120-129mmHgかつ拡張期血圧80mmHg未満)の段階から脳・心血管疾患の発症リスクが高まることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部公衆衛生学・大学院データサイエンス研究科の桑原恵介准教授らの研究グループによるもの。研究成果は日本高血圧学会の国際誌「Hypertension Research」電子版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脳・心血管疾患は日本人の死因の第2位であり、職場での労働損失の原因疾患としては第3位に位置することが報告されている。脳・心血管疾患の発症に対して高血圧が関係することは知られているが、血圧分類はエビデンスの蓄積と共にアップデートされてきた歴史がある。最近では日本高血圧学会が「高血圧治療ガイドライン2019」において新たな血圧分類を提唱した。しかし、この新しい血圧分類と脳・心血管疾患発症の関係を調べた日本の研究はほとんどなく、新たに定められた正常高値血圧の段階から脳・心血管疾患リスクがどの程度上昇するかははっきりしていない。

また、過去の日本の研究は2000年代以前に測定した血圧値を用いた研究が多く、比較的高齢な人を対象とした研究が多いという課題もあった。近年は、救急救命技術の向上や喫煙率の低下といった脳・心血管疾患を取り巻く環境も変わってきている。過去の知見が現在の働く世代にどれほど適用できるかは不明瞭である。そこで研究グループは、企業等に勤務する労働者を対象としたJ-ECOHスタディのデータを用いて、働く世代における最新の血圧分類と脳・心血管疾患発症との関係を調査した。

労働者約8万人を最大9年間追跡、発症リスク、集団寄与危険割合を算出

調査対象はJ-ECOHスタディ参加施設(関東・東海地方に本社のある企業等)の労働者のうち、2011年度または2010年度に職域定期健康診断を受診し、「高血圧の治療中ではない」20~64歳8万1,786人。追跡期間は最大9年間(2012年4月~2021年3月)で、2011年度または2010年度の血圧値を「高血圧治療ガイドライン2019」に基づき6群に分類した。
1)正常血圧:収縮期血圧120㎜Hg未満かつ拡張期血圧80mmHg未満
2)正常高値血圧:収縮期血圧120-129mmHgかつ拡張期血圧80mmHg未満
3)高値血圧:収縮期血圧130-139mmHgかつ/または拡張期血圧80-89mmHg
4)Ⅰ度高血圧:収縮期血圧140-159mmHgかつ/または拡張期血圧90-99mmHg
5)Ⅱ度高血圧:収縮期血圧160-179mmHgかつ/または拡張期血圧100-109mmHg
6)Ⅲ度高血圧:収縮期血圧180mmHg以上かつ/または拡張期血圧110mmHg以上

脳・心血管疾患発症については、コホート内で脳・、疾病休業、死亡の3種類の登録制度を構築し、これらの登録情報を用いて定義した。脳・心血管疾患は国際疾病分類(ICD-10)に基づいて分類し、次の疾患から定義した。脳・(I60-I69)、虚血性心疾患(I21-I25)、心停止(I46)、心房細動・不整脈・心不全(I48-I50)、大動脈瘤・大動脈解離・その他の動脈瘤・動脈解離(I71-I72)。脳卒中と心筋梗塞は「発症」を含むが、それ以外の疾患は「長期病休また死亡」に至ったケースのみを含むとした。

統計解析は、コックス比例ハザードモデルを用いてハザード比を算出し、血圧分類と脳・心血管疾患発症リスクの関連を検討した。2011年度時点(一部は2010年)の企業、性別、年齢、喫煙、糖尿病、脂質異常症、体格指数(Body mass index)を解析上で考慮し、これらの要因による影響をできるだけ取り除いた。そして、各血圧区分が脳・心血管疾患発症に及ぼす影響を推計するために、集団寄与危険割合を算出した。

正常血圧群に比べ正常高値血圧群の発症リスクは約2倍

対象者約8万人の追跡期間中に334人が脳・心血管疾患を発症した。血圧が高くなるほど脳・心血管疾患発症リスクは上昇し、正常血圧群を基準として、調整ハザード比は正常高値血圧群で1.98、高値血圧群で2.10、Ⅰ度高血圧群で3.48、Ⅱ度高血圧群で4.12、Ⅲ度高血圧群で7.81とわかった。集団寄与危険割合は高値血圧群が最も高く(17.8%)、それにⅠ度高血圧群(14.1%)、正常高値血圧群(8.2%)が続いた。一方、Ⅱ度高血圧(4.1%)やⅢ度高血圧(2.1%)の占める割合は低く、高値血圧群からⅠ度高血圧群までが集団寄与危険割合のほとんど(87%)を占めることもわかった。

労働者自身が意識的に血圧管理に取り組むことが望まれる

これらの結果より、少し高い血圧(正常高値血圧)の段階から脳・心血管疾患発症リスクに対する取り組みが必要であることが明らかとなった。また、たとえ健康診断で血圧があまり高い値ではなかったとしても、勤労者本人は意識的に血圧管理に取り組んでいくことが期待される。「特に、企業や保健医療専門職は、そうした勤労者の取り組みを後押ししていくことが求められる。研究面では、正常高値血圧・高値血圧から正常血圧まで血圧を戻すことで、脳・心血管疾患リスクが低下するかどうかを就労世代で検証していくことが望まれる」と、研究グループは述べている。

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