ALSに近い症候群と考えられるFOSMN、世界100例程度で臨床像は不明だった
九州大学は4月9日、国内初の顔面発症感覚運動ニューロノパチー(Facial Onset Sensory and Motor Neuronopathy:FOSMN)症候群の全国臨床疫学調査を実施し、国内における推計患者数、FOSMNの詳細な患者像や免疫治療への反応性などを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院神経内科学分野の山﨑亮准教授、同大医学系学府博士課程4年の江千里氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of the Neurological Sciences」に掲載されている。
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FOSMNは、顔面もしくは口腔内の感覚障害から発症し、感覚障害が嚥下・構音障害などの運動症状とともに次第に下肢に向かって広がっていく症候群。世界で100例程度の報告しかないため、有病率や臨床像は明らかになっていない。診断基準もはっきりとは定まっておらず、治療方法も見つかっていない。
一方、症状は多彩で、歯科、脳神経内科、脳神経外科、整形外科、耳鼻咽喉科など多くの診療科にまたがって患者が受診している可能性があり、未診断例も多く存在することが予想される。筋萎縮性側索硬化症(ALS)に近い症候群であると考えられており、病気の進行とともに体が不自由になり、呼吸不全もきたす。しかし、病気が十分に認知されておらず、社会福祉サービスも整っていない。
瞬目反射検査などが早期診断に有用、早期の免疫療法で症状緩和の可能性
今回の研究では、FOSMNの全国臨床疫学調査を行い、国内におけるFOSMNの推計患者数を35.8人と算出した。また、全国から集めたFOSMN患者21例の臨床情報を解析。その結果、角膜反射や咽頭反射の障害、瞬目反射検査の異常がFOSMNの早期診断に有用なこと、発症早期で免疫療法が症状を和らげる可能性があることなどがわかり、FOSMNの臨床像を明らかにした。
運動症状「強」患者は進行が早い傾向
さらに、FOSMN患者21例を運動症状が強い群、運動症状と感覚症状が同程度である群、感覚症状が強い群の3群に分類。その結果、より症状が重く日常生活への支障が大きい運動症状が強い群で、最も発症からの期間が短いことがわかった。すなわち、運動症状が強い患者は進行が早いことを発見した。
今後、FOSMNの原因解明・治療法開発に期待
同研究成果により、FOSMNの臨床像が明らかになったことで、FOSMN患者をより早期に診断し、病型によって適切なタイミングで治療や社会福祉サービスの手配を行うことが期待される。また、同症候群が世に広く知られることで知見がさらに集まり、診断される患者が増え、今後、病気の原因の解明や治療法の開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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