視診だけで正しく診断可能か?医師の専門分野別に診断精度検証の研究はなかった
新潟大学は4月5日、ビデオ通話を利用した皮膚疾患のオンライン診療において、診断精度を医師の専門分野別に検証した研究成果を発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野の藤本篤講師(研究当時)、阿部理一郎教授、同研究科地域医療確保・地域医療課題解決支援講座の井口清太郎特任教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Dermatology」に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
多くの皮膚疾患では、皮膚に「皮疹」と呼ばれる見た目でわかる症状が現れる。皮疹の形や色など性状や分布は、皮膚疾患を診断する上で非常に重要な情報であり、医師は皮疹の視診を行って診断する。その他、触診などから得られる情報もある。昨今、ビデオ通話を利用したオンライン診療が一般的になりつつあるが、オンライン診療において、つまり、主に視診による情報だけで皮膚疾患を正しく評価できるかについては、医師の専門分野別に診断精度を検証した研究はなかった。
専門医/専攻医/内科専門医でオンライン診察での皮膚疾患診断性能を比較検証
そこで今回研究グループは、オンライン診察における皮膚疾患診断の性能を、皮膚科専門医、皮膚科専攻医(専門医未取得の皮膚科医)、非皮膚科専門医(内科専門医)の間で比較検証した。同研究では、すでに診断の確定している皮膚疾患患者18人の皮膚の状態を、別室に控えている合計医師18人(皮膚科専門医6人、皮膚科専攻医6人、非皮膚科専門医6人)にビデオ通話システム「Zoom」(Zoom Video Communications, Inc.)を使用して中継した。医師らは、中継画面を通じて患者の皮膚病変を観察し、患者の年齢・性別と簡単な病気の経過等の情報と合わせて診断を回答。その結果をもとに、医師らのオンライン診療における皮膚疾患の診断精度を算出し、それぞれの医師ごとや、皮膚疾患の種類などにより診断精度が変わるどうかを検証した。
専門医、専攻医との比較でも高い診断精度を示す
研究の結果、オンライン診療における診断精度について、皮膚科専門医は83.3±3.5%(77.8–89.0%)、専攻医は53.7±20.7%(27.8–77.8%)、非皮膚科専門医は27.8±5.0%(22.2%–33.3%)だった。皮膚科専門医は、非皮膚科専門医(P<0.0001)に対してだけでなく、専攻医(P<0.05)と比較しても、高い診断精度となる結果が示された。
皮膚科専門医のみ80%以上「高」正診率、乾癬を含む炎症性角化症など
また、皮膚科専門医のみが80%以上の高い正診率を発揮した疾患カテゴリーとして、乾癬を含む炎症性角化症(皮膚科専門医87.5%、専攻医58.3%、内科専門医20.8%)や、多形滲出性紅斑を含む炎症性皮膚疾患(皮膚科専門医83.3%、専攻医33.3%、内科専門医8.3%)、遺伝性角化症(皮膚科専門医83.3%、専攻医33.3%、内科専門医0%)などが明らかとなった。
今後、さまざまな皮膚疾患の診断精度検証で、遠隔医療の適正な促進に期待
情報技術インフラの向上やスマートフォン等の普及によって、今後、ビデオ通話を利用したオンライン診療が遠隔医療の主流になることが予想される。今回の研究では、遠隔皮膚科医療における皮膚科専門医の役割と、効果的かつ安全な遠隔皮膚科医療のために構築すべき制度に焦点を当てている。今後、よりさまざまな皮膚疾患の診断精度を検証することで、遠隔皮膚科医療の適正な促進につなげていくことが望まれる、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・新潟大学 プレスリリース