人間の脳は世代を追うごとに大きくなっている
人間の脳は、世代を重ねるごとに大きくなっていることが、新たな研究で明らかになった。研究グループは、脳のサイズが大きくなることで脳の予備能が高まり、それが認知症の発症リスクの低下に寄与している可能性があると考察している。米カリフォルニア大学デービス校アルツハイマー病研究センター所長のCharles DeCarli氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に3月25日掲載された。
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この研究では、1925年から1968年の間に出生したフラミンガム心臓研究参加者3,226人(女性53%)の脳MRIのデータを用いて、出生年代により頭蓋骨および脳の容積に差が認められるのか否かを検討した。これらの参加者の中に認知症患者や脳卒中の既往歴のある人は含まれていなかった。参加者の脳MRIは、1999年3月18日から2019年11月15日の間に実施され、実施時の対象者の平均年齢は57.4歳(範囲45〜74歳)だった。
その結果、脳のサイズは年代を追うごとに徐々に大きくなっていることが明らかになった。例えば、1930年代生まれの人に比べて1970年代生まれの人では、頭蓋内容積が6.6%(1,234mL対1,321mL)、白質の体積が7.7%(441.9mL対476.3mL)、海馬の体積が5.7%(6.51mL対6.89mL)、脳表面積が14.9%(1,933cm2対2,222cm2)大きかった。
こうした結果を受けてDeCarli氏は、「生まれた年代は、脳の大きさと長期的な脳の健康に影響を与えるようだ」と話している。
研究グループは、これらの結果は米国でのアルツハイマー病発症の傾向と一致する可能性があるとの見方を示している。現在、米国のアルツハイマー病患者の数は約700万人に上り、その数は2040年までに1120万人を超えると予想されている。一方で、全人口に占めるアルツハイマー病患者の割合は減少傾向にあり、認知症の発症率は、1970年代から10年ごとに約20%減少していることが過去の研究で示されている。こうしたことを踏まえて研究グループは、「アルツハイマー病の発症率が低下している理由の一つには、脳のサイズが大きくなっていることが関係しているのかもしれない」との見方を示している。
DeCarli氏は、「今回の研究で観察されたような、より大きな脳の構造は、脳の発達および脳の健康状態の向上を反映している可能性がある。脳のサイズが大きいということは、脳の予備能が大きいということであり、アルツハイマー病やそれに関連する認知症のような加齢に伴う脳疾患の晩年における影響を緩和する可能性があるからだ」と話している。
▼外部リンク
・Trends in Intracranial and Cerebral Volumes of Framingham Heart Study Participants Born 1930 to 1970
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