たこつぼ型心筋症、ギラン・バレー症候群の重篤な合併症として危険視されている
近畿大学は4月4日、ギラン・バレー症候群のうち、たこつぼ型心筋症を合併した患者の臨床的特徴を解明したと発表した。この研究は、同大医学部内科学教室脳神経内科部門の桑原基講師、大学院医学研究科医学系専攻神経病態制御学博士課程4年の寺山敦之氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Neurology」にオンライン掲載されている。
ギラン・バレー症候群は、急激に手足の筋力が低下する免疫性神経疾患である。症状として、呼吸筋の麻痺や感覚障害、脳神経障害、自律神経障害などが知られており、こうした神経症状の1~2週間前に風邪などの感染症状が見られることが多く、症状は2~4週間以内に最も重くなる。
一方、たこつぼ型心筋症は、主に身体的・精神的ストレスが原因となり、交感神経系が活性化され心臓に障害が起こる疾患で、頻度は多くないものの、さまざまな神経疾患に合併することが知られている。収縮不全を起こした心臓左室の形状が「たこつぼ」に類似していることから命名されている。先行研究から、たこつぼ型心筋症患者の院内死亡率は約4%であることが明らかになっており、ギラン・バレー症候群の重篤な自律神経系の合併症の一つとして危険視されている。しかし、どのような患者にたこつぼ型心筋症の合併が起こりやすいか、また、合併した際にどのような症状になるかについては明らかになっていなかった。
後方視的研究を実施、高齢発症・下位脳神経障害などの臨床的特徴が判明
そこで研究グループは、たこつぼ型心筋症を合併したギラン・バレー症候群の臨床的特徴を明らかにすることを目的に解析を行った。同大医学部内科学教室の脳神経内科部門において、カルテなどの診療データを匿名化して用いる後方視的研究を行い、血液中の抗ガングリオシド抗体を調べた症例からたこつぼ型心筋症を合併したギラン・バレー症候群8例を抽出し、その臨床的特徴を解析した。さらに、たこつぼ型心筋症を合併していない典型的なギラン・バレー症候群(対照群)との比較を行った。
その結果、たこつぼ型心筋症を合併したギラン・バレー症候群は、対照群と比較して、(1)発症年齢が高齢、(2)脳神経障害が全例にみられ、特に下位脳神経の障害が多い、(3)入院時とピーク時に筋力低下が重度だった、(4)人工呼吸器装着例が多い、という特徴があった。
ギラン・バレー発症から10日以内の発症例多く、頻脈や血圧低下のほか心電図変化なども
また、8例中7例がギラン・バレー症候群の発症早期(発症から10日以内)にたこつぼ型心筋症を発症していた。たこつぼ型心筋症を合併したギラン・バレー症候群では、心血管系の自律神経障害(頻脈や血圧低下)が多くみられ、血漿中や尿中のカテコールアミンを測定していた2例では、いずれでもその濃度が上昇していた。3例では抗ガングリオシド抗体が陽性だったが、抗体の種類に特徴や傾向はみられなかった。さらに、8例中7例で陰性T波という心電図変化が確認された。
早期発見や速やかな治療につながると期待
今回の研究で明らかになった臨床的特徴に注目することで、ギラン・バレー症候群の重篤な合併症の一つであるたこつぼ型心筋症を早期に発見することが可能となり、速やかな治療につながることが期待される。
「ギラン・バレー症候群の主な症状は四肢筋力低下だが、呼吸筋麻痺やさまざまな自律神経障害がみられることがある。特に、本研究で明らかになった特徴を有する場合は全身状態を注意深く観察する必要があり、たこつぼ型心筋症の合併を早期発見して、全身管理や治療につなげることができる」と、研究グループは述べている。
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