FMTを社会実装し腸内細菌医薬品開発をするためには腸内細菌ドナーが不可欠
メタジェンセラピューティクス株式会社は4月2日、同日より、日本初の腸内細菌叢バンク「J-Kinsoバンク」の運用および「腸内細菌ドナー」の募集を開始したと発表した。
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近年の研究により、腸内細菌叢の乱れは、がん、潰瘍性大腸炎、パーキンソン病、アレルギーなど、さまざまな疾患と関連することが明らかになっている。腸内細菌に関する研究の進展とともに、世界では腸内細菌を「医療」において活用する動きが広がっており、米国やオーストラリアで腸内細菌による医薬品が承認されている。
日本では、2023年1月より先進医療Bとして潰瘍性大腸炎を対象とした「抗菌薬併用腸内細菌叢移植療法」が承認され、腸内細菌叢移植(Fecal Microbiota Transplantation、以下、FMT)の有効性・安全性の検証が進んでいる。今後日本においてFMTを社会実装し、腸内細菌医薬品の開発を推進するためには腸内細菌ドナーの協力が不可欠だ。
登録希望者はウェブ問診に回答、最終的に腸内細菌ドナーとなるのは約10%と推定
J-Kinsoバンクは、日本初となる腸内細菌を活用した医療技術や医薬品の開発を目的とした腸内細菌叢バンクだ。同バンクでは便を提供する腸内細菌ドナーを募集し、スクリーニングを実施する。適格となったドナーの便は腸内細菌の抽出などの製造工程を経て、FMTの臨床試験に使用される。またドナーの便を、腸内細菌を活用した医薬品の研究開発にも活用するとしている。
同社は2024年4月2日より、J-Kinsoバンクにおける腸内細菌ドナー候補者の登録受付を開始した。登録希望者はウェブサイトでウェブ問診に回答し、安全性基準を満たした人を「腸内細菌ドナー候補者」として登録する。さらに、ドナー候補者のうち医療機関での適格性検査を通過した人のみ、正式に腸内細菌ドナーとしての「献便(便の提供)」が可能となる。全ての検査を通過して腸内細菌ドナーとなる人は、ウェブ問診回答者のうち、約10%と推定されている。
なお、腸内細菌ドナーによる献便は4月2日より当面の間、順天堂大学医学部附属順天堂医院内の所定の場所で実施される。同社は今後、日本国内複数か所に献便施設を設け、より多くの腸内細菌ドナーに献便をしてもらえる環境を整えていくとしている。
FMTが患者負担の少ない治療選択肢となる可能性
順天堂大学医学部消化器内科の准教授で同社の取締役CMOの石川大准教授は「J-Kinsoバンクは腸の健康のバトンをつなぐ新しいバンクだ。健康な人の腸内細菌が本バンクを通じて多くの患者とシェアされ、病気の治療につながる未来が目の前まで迫っている。今後FMTは、より患者負担の少ない治療選択肢となる可能性を秘めている。研究の成果を多くの患者に届けるためにはドナーの協力が必要だ。ぜひとも協力をお願いしたい」と、述べている。
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・メタジェンセラピューティクス株式会社 プレスリリース