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早期心筋梗塞の新たな法医診断指標を発見、虚血関連分子Nrf2-和歌山医科大

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2024年04月04日 AM09:20

発症早期心筋梗塞は法医解剖時の肉眼的特徴・顕微鏡下での特徴に乏しい

和歌山県立医科大学は3月28日、心筋梗塞が死因と判断された事例で、心筋におけるNrf2の陽性細胞が多数観察され、Nrf2が早期心筋梗塞の法医診断に有用であることが明らかになったと発表した。この研究は、同大医学部法医学講座の冷水詩音氏、石田裕子准教授、安田啓喜氏、國中由美特別研究員、野坂みずほ講師、石上安希子講師、島田栄美研究補助員、木村章彦博士研究員、山本寛記助教、大迫美優大学院生、Wei Zhang大学院生、後藤詩子氏、鎌田哲帆氏、近藤稔和教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

心筋梗塞を含む心疾患は、日本の死因の第2位。特に、急性心筋梗塞は年間約15万人が発症し約30%が死亡しているとされている。類似した病気の「狭心症」と合わせて、虚血性心疾患と呼ばれる。突然死の原因として、心筋梗塞の死後診断は非常に重要だ。しかし、発症早期の心筋梗塞は、法医解剖時に見られる肉眼的な特徴および、顕微鏡下で認められる特徴に乏しく、その法医診断が困難なことが課題とされてきた。これらの問題に対し、心筋細胞が虚血に陥った際に生成されるタンパク質を免疫組織化学的に解析し、心筋梗塞であるか否かを検討する方法が模索されてきた。

心筋細胞虚血時に働く分子Nrf2の発現を、既存の診断指標FNやC5b-9と比較

Nrf2は、心筋細胞の虚血時に働く分子の一つだが、これまでNrf2の心筋梗塞の死後診断への応用は検討されていなかった。そこで今回の研究では、法医剖検試料における心筋細胞内Nrf2タンパク質の発現を解析し、その結果を既存の診断指標として用いられているfibronectin(FN)やC5b-9の発現と比較した。

死後72時間未満の心筋梗塞群では、Nrf2陽性細胞が有意に多数

今回の研究では、死後経過時間が72時間未満の法医剖検例64例(男性42例、女性22例)の心臓組織試料について検討。法医剖検例は死因により、心筋梗塞群(25例)ならびに、その他の死因群(対照群:39例)の2群に分類した。この2群間において、Nrf2タンパク質の発現所見に違いが認められるかについて検討した。

Nrf2のタンパク質発現は、心筋梗塞群では心筋細胞の核内で検出された。また、心筋梗塞群と対照群の比較では、Nrf2陽性細胞数に有意差が認められた(心筋梗塞が死因と判断された事例で、心筋におけるNrf2の陽性細胞が多数観察された)。これらの結果からNrf2はこれまでに使われてきた心筋梗塞の指標であるFNやC5b-9と比較しても、絶対的評価が可能な点で客観性が高いことが示された。Nrf2発現が発症早期の心筋梗塞の法医診断に有用であるという新たな知見を得た。

従来指標と組み合わせ、診断精度の向上に期待

今回の研究成果により、Nrf2の発現が発症早期の心筋梗塞の心筋細胞で有意に亢進し、死後診断の指標の一つとして有用であることが判明した。したがって、これまでに使用されてきた診断指標のFNやC5b-9と組み合わせて用いることにより、より客観的かつ正確に心筋梗塞の診断をすることが可能となり、法医診断が困難とされていた発症早期の心筋梗塞の診断精度が向上することが期待される。

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