腸炎ビブリオのIII型分泌装置の発現、VtrBによる制御の詳細は不明点が多かった
大阪大学は4月1日、食中毒の主要な原因菌である腸炎ビブリオが病原性制御因子の自己遺伝子発現活性化により病原因子の発現を増幅する仕組みを明らかにしたと発表した。この研究は、同大微生物病研究所細菌感染分野生命機能研究科博士課程のDhira Saraswati Anggramukti氏、石井英治助教(感染症総合教育研究拠点兼任)らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS Pathogens」に掲載されている。
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腸炎ビブリオは1950年に同研究所において発見された、食中毒の代表的な原因細菌である。腸炎ビブリオの腸管感染に重要な病原因子としてIII型分泌装置が報告されている。このIII型分泌装置の遺伝子群の発現は病原性制御因子VtrBによって制御されることが知られていたが、その遺伝子発現制御機構の詳細は依然として不明な点が多い状況だった。
活性化した上流遺伝子群が下流のvtrB遺伝子までリードスルーすることでVtrBが自己遺伝子発現を活性化すると判明
今回、研究グループはVtrBが自己遺伝子の発現を活性化することで自身の発現を増強していることを見出した。さらに、このVtrBの自己遺伝子発現活性化の機序が一般的に知られる自己プロモーターの活性化によるものでなく、VtrBにより活性化された上流遺伝子群の転写が転写終結部位であるターミネーターで完全に終結されずにvtrB遺伝子まで伸長するリードスルー転写によってもたらされることを示し、その結果として形成される遺伝子発現増幅ループによるVtrB発現の増強がIII型分泌装置遺伝子群の発現の活性化ならびに腸炎ビブリオの病原性の発揮に重要であることを明らかにした。
標的として、新たな感染制御法開発につながる可能性も
「本成果は腸炎ビブリオの病原性発現制御機構のみならず細菌の遺伝子発現制御の複雑性を理解する上で有用な知見であり、この病原遺伝子発現活性化機構を標的とした腸炎ビブリオの感染制御法の開発につながることも期待される」と、研究グループは述べている。
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・大阪大学微生物病研究所 研究成果