高田浩樹会長(高田製薬社長)は記者会見で、供給不安解消の見通しについて、「供給不安が起こる背景が変化していたり、連鎖的に起きていることもあって、どういった形でいつ供給がなくなるのかについては答えられない」と述べた。不正製造に端を発する供給不足に製造体制が追い付いていないことに加え、インフルエンザの早期流行、災害、資材調達の滞りなど「(供給不安が)長引いている原因が複合的になっている」との認識を示した。
一方、この日の会見では、品質確保のための人員などの適切な配分と人材確保が不十分との結果だったとの会員会社の調査結果が発表された。
GE薬協が2022年8月に東京理科大学と協力して行ったアンケートによるもので、「全くできていない」の0点から最高点の「できている(積極性+先見性)」の4点までの5段階で評価した結果、品質方針・品質目標を達成するため必要な人、コスト、モノ、構造設備などの資源の適切な配分が「できている」とする2点を下回る1.8点だった。「会社は適切な人材配置や人材確保に取り組んでいるか」についてはさらに低い1.3点だった。
この結果の背景について、品質委員会の大石政道委員長は「投資ができない企業が増えてきている。QA・QCに対するリソースの目安にまだ足りないと認識されている。品質関係担当者はすぐに育たない。人材の取り合いになっている中で、思ったようなスピードでリソースを確保できていない現状が結果に表れていると感じる」と説明した。
高田氏は「品目数、生産量の増加に伴った人材育成ができたかどうかはしっかりと見直す必要があろう。人材確保は医薬品メーカーとして今後も大きな課題になってくると考えている」と述べた。
リソース配分について経営陣はできていると評価する一方で、管理職・非管理職はできていないと評価にズレがあることにも言及。「常に現場との乖離はどの企業もおそらく感じているところだと思う。品質文化を醸成していく中で、同じ目線で同じ知識で取り組んでいくことは重要な課題であり、協会として各社に取り組みを促していきたい」と語った。
今後の取り組みについては、薬価制度改革で導入された企業指標に安定供給の取り組みが盛り込まれていることから、「各社が取り組んでいくことの大きな転換になると理解している」と述べ、「企業指標が導入されたことによる効果の検証にも積極的に参画していきたい」との意向を示した。
また高田氏は、厚労省検討会で企業間の連携で持続的な安定供給を確保することも対策の一つに上がっていることについて「一つの選択肢」とし、「弱みを補い合う連携を取れるのではないかと考えている」と述べつつ、「各社が抱える品質、供給の課題を解決していくことが喫緊の課題」と話した。厚労省には、検討会で示されている対応策の速やかな実施が必要と指摘した。
これらの対策が薬局や薬剤師、医療機関が実感できるものになっているのかとの薬事日報質問に、広報委員会の南雲浩之委員長は「医療現場からは非常に厳しい言葉がある一方、こういった取り組みに理解を示して、肯定的に今後の対応をしてほしいとの温かい言葉があるのも事実。そうした言葉を糧にしながら社会全体に貢献できるよう引き続き精進していきたい」と語った。