複雑多様な病型や疾患活動性を捉える新規バイオマーカー開発が不十分だった
大阪大学は3月29日、気管支喘息において、病態や診断に有用な新規バイオマーカー(BM)としてガレクチン10を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の吉村華子氏(博士後期課程)、武田吉人准教授、熊ノ郷 淳教授(呼吸器・免疫内科学)らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Allergy and Clinical Immunology」にオンライン掲載されている。
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気管支喘息は、肺におけるアレルギー疾患の代表として認知度は高いものの、病態や診断法など課題も多い疾患だ。とりわけ、複雑多様な病型(表現型)や疾患活動性を捉える新規バイオマーカー開発が不十分だった。研究グループは、今まで慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺線維症、新型コロナウイルス肺炎において、細胞外小胞(エクソソーム)の網羅的解析により、新規BMを同定するだけでなく、病態解明や創薬にも役立ててきた。
エクソソーム解析で、診断・粘液栓・エトーシスと密接に相関のガレクチン10を同定
今回、研究グループは、新規メッセンジャーとして注目されているエクソソームの網羅的解析により、血液中に浮遊するエクソソーム(血液1滴)から3,000種類以上に及ぶ膨大なタンパク質を捉えるだけでなく、喘息患者肺も同時に網羅的解析を加える統合解析により、喘息病態と密接に関わる新規BMを世界で初めて同定した。とりわけ、ガレクチン10を含む新規BM分子は、喘息診断や気流閉塞(粘液栓)だけでなく、喘息病態と密接に関わるエトーシス(好酸球の細胞死)と相関した。
さらに、喘息に合併することが多い好酸球性副鼻腔炎(ECRS)においても、同様のBMが診断のみならず、病勢(疾患活動性)と相関することを発見。従来、喘息に活用されてきたバイオマーカーとして血中好酸球数が主に活用されてきたが、エクソソーム中ガレクチン10は、好酸球数に優る新規BMであることが示唆された。
今回の研究成果として、複雑多様な喘息において、同成果から見出された新規BMが、喘息診断だけでなく、病態解明や治療法開発に有用であることが示唆された。「新規BMは、炎症性疾患における好酸球性炎症の同定にも応用可能と考えられる。さらに、今後は、難病や悪性疾患においても、本手法がリキッドバイオプシーとして有用である可能性が示唆された」と、研究グループは述べている。
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