24年度秋冬接種に向け実用化を目指す
Meiji Seika ファルマ株式会社は2024年3月19日、新型コロナウイルス感染症に対する次世代 mRNAワクチン(レプリコン「コスタイベ筋注用(以下、コスタイベ)」)の起源株およびオミクロンBA.4-5株に対応する2価ワクチンの国内第Ⅲ相試験において主要評価項目を達成したことを受け、記者説明会を開いた。
今回の試験結果を踏まえて同社は「コスタイベはCOVID-19の新たな変異株が出現し、ウイルス株が変更されても、起源株の試験で示された高い免疫原性および安全性が再現できることが確認された」と強調。コスタイベのプラットフォームが確立されたとして、2024年度の秋冬接種に向けワクチンの実用化を目指すとしている。
臨床試験を行うことなく迅速な供給が可能に
コスタイベは接種後に体内でmRNAが自己複製するレプリコンワクチンで、従来のmRNAワクチンと比較して少量の接種で抗体ができ、効果が持続する利点があるとされる1)。2023年11月に起源株を用いた1価ワクチンとして承認されたものの、当時はオミクロン株XBB系統が流行していたため供給はされなかった。
今回の試験は、既承認のmRNAワクチンを3~5回接種し、最終接種から3か月以上経過した18歳以上の被験者に対し、起源株とBA.4/5系統に対応する2価のコスタイベを接種した際の既存オミクロン株対応2価ワクチンに対する免疫原性の非劣性を検証、さらに1回追加接種した際の安全性を評価したもの。中間解析の結果、主要評価項目である接種28日後のオミクロンBA.4-5株に対する中和抗体価の幾何平均および抗体応答率において、既存オミクロン株対応 2価ワクチンに対する非劣性が示された。さらに副次評価としてオミクロン BA.4-5株および起源株に対する優越性も検証されたという。
同社代表取締役社長の小林大吉郎氏は説明会で「今回の試験結果により、どんな変異株に対してもコスタイベの高い有効性と安全性を再現できる、同じ性能のワクチンが作れることがほぼ証明された。今後は流行株に対応したコスタイベを、臨床試験を行うことなく一変申請でき、迅速なワクチン供給が可能になる」との認識を示した。
小林大吉郎氏(Meiji Seika ファルマ株式会社 代表取締役社長)
安定供給に向けて製造体制の整備を進める
説明会では、国内製造拠点の整備状況も報告された。同社が提携するCDMO企業のアルカリスの原薬製造施設(福島県南相馬市)は2023年7月に竣工している。2024年は同施設の原薬を使ってMeiji Seikaファルマテック株式会社が製剤する。さらに製剤施設を順次稼働させる計画で、最終的にはパンデミック発生時に日本国民全員分のワクチン供給が可能になると見込んでいる。
1)Bloom K, et al: Self-amplifying RNA vaccines for infectious diseases. Gene Therapy. 2021;28:117-129.