筋骨格系疼痛患者、不眠などのCSSと疼痛強度の臨床症状はさまざま
畿央大学は3月29日、中枢性感作関連症状と疼痛強度に基づいたグループ分類において、中枢性感作関連症状(Central sensitization-related symptoms:CSS)が強いことは疼痛強度に関わらず臨床転帰が不良になることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大ニューロリハビリテーション研究センターの重藤隼人客員研究員と同大学院博士後期課程の古賀優之氏、森岡周教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」に掲載されている。
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痛みが慢性化する要因となる痛覚変調性疼痛には、損傷量から予測されるよりも広い範囲で生じる強い痛みや疲れやすさ、不眠、記憶力の低下、気分の不調といったさまざまな症状(CSS)が含まれている。筋骨格系疼痛患者は、しばしば不眠や疲労といったCSSを呈する。しかし、疼痛が軽度でもCSSが強かったり、CSSが軽度でも疼痛が強かったりと、個々の患者で臨床症状はさまざまだ。
CSSと疼痛強度の重症度から4グループに分類、横断/縦断的に分析
そこで今回の研究では、質問紙表の結果を用いたCSSと疼痛強度の重症度から4つのグループに分類し、横断的な特徴や縦断的な臨床転帰を分析した。有痛患者を対象に、短縮版CSI(CSI9)と、さまざまな性質の痛み強度を点数化するShort Form McGill Pain Questionnaire–2(SFMPQ2)を評価。これら2つの質問紙の評価結果に基づいて、4つの群に分類した。横断的分析の結果から、各群で異なる特徴が抽出された。
疼痛/CSSがともに強いGroup3は疼痛強度、CSS、身体知覚異常、心理的要因が全て重度だった。これに対し、Group4は身体知覚異常と心理的要因が軽度~中等度であり、Group2は疼痛強度、身体知覚異常が重度であるという特徴が見られた。Group1は全ての項目が軽度だった。
CSS・疼痛ともに軽度は1か月後の改善良好、その他は改善しにくい傾向
縦断的解析として、Numerical Rating Scale(NRS)のMinimal Clinically Important Difference(急性痛:22%、慢性痛:33%)に基づいた1か月後の疼痛改善者割合を分析したところ、Group1のみ改善は良好であり、Group2、3、4は改善しにくい傾向にあることがわかった。
CSS重度グループは臨床転帰不良
Group1は疼痛改善が良好だが、Group2、3、4は疼痛改善が良好とは言えなかった。また、CSSが重度なGroup3、4では約5割しか疼痛改善者がいなかった。
個々の患者が縦断的にどの群へ移行するかを分析したところ、CSSが重度なGroup3、4では、軽症群であるGroup1への移行が少ないことに加え、痛みがさほど強くないGroup4に属する患者の一部(5/40人、12.5%)は重症群であるGroup3へ移行していることがわかった。
今後、関連症状を呈する患者背景の神経過敏性も検証
不眠や疲労感といった関連症状が強い場合は臨床転帰が不良となりやすく、痛みが軽度でも改善しにくいことや、一部の患者は重症化することもある。そのため、患者の訴えを注意深く観察し適切に対処していく必要がある。今後は、このような関連症状を呈する患者の背景にある神経過敏性についても検証していく予定だ、と研究グループは述べている。
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